りょう)” の例文
すでに蹶起のことは天聴に達し、自分らの行動をりょうとする旨、軍でも言明している。あとのことは真木大将らにまかせてあると言う。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
けれども僕はしばしば言いしとおり、僕の同僚どうりょうたる凡人ぼんじんに対して話をするのであるから、よろしく非凡の人々はりょうとしてもらいたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかし著者の意はその辺の些事さじになくして、蕪村俳句の本質を伝えれば足りるのである。読者う。これをりょうしてこれを取読せよ。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
『夜すみれにおもむき、久美子に予が衷情ちゅうじょうを打ち明く。久美女それをりょうとせり。帰来、いささか虚脱を感ず。幸福とはかくの如きものか』
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
大阪方でもその意をりょうし、また一面には謙虚のこころを以て名優に相当の敬意を表するという用意もあるべきであったが、土地の贔屓連は勿論
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
流星のごとく天際に消えたのでしょう、一点似た釘も見当りません。——唯今……要求しますのは、そののちの決心である事をりょうとして下さいまし。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜来、風邪気味、せっかくながら、今朝のお茶に参じ難し、春風なお機あらん、近日拝面、おわび申す、りょうせられよ——という意味の短い謝状であった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから諸君もそのこころざしりょうとして、しまいまで静粛にお聴きにならんことを希望します。このくらいにしてここに張り出した「中味なかみと形式」という題にでも移りますかな。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
証人はその意をりょうして、胸のポケットから原稿をとり出した。彼はそれを蝋燭の火に近寄せて、自分がこれから読もうとするところを見いだすまで、その幾枚を繰っていた。
天下のめに一身を犠牲ぎせいにしたるその苦衷くちゅう苦節くせつりょうして、一点の非難ひなんさしはさむものなかるべし。
慣れぬ人に料理法を教ゆるは思い掛けぬ処にて間違まちがいを生じやすし。お登和嬢もその意をりょう
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しようがないからそれに応じて、意をりょうしたようなまねをしているのであった。
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ながめ悲哀に胸をこがすのみ余は記するあたわず幸いにりょうせよ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
読者りょうせよ。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おれの代も、遂にろくな家名も興さず終るのかな。……だが今の時勢に、これだけの物をくさずに持ちこたえて来ただけでも、御先祖はりょうとしてくれるかもしれぬ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丸いものが三角に積まれるのは不本意千万だろうと、ひそかに小桶諸君の意をりょうとした。小桶の南側は四五尺のあいだ板が余って、あたかも吾輩を迎うるもののごとく見える。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ために過失におちいらざらんと心づくことはりょうとすべきことである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
こういう書面の内容を見て、秀吉は、秀長の意をりょうとしたか、或いは、初めから秀長をして発奮させるためにやったことか、とにかく、秀吉自身の出馬は、沙汰止さたやみになった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故にわれわれは反動として多少このかんの消息をりょうとせねばならぬ。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
呂凱りょがいいさめはりょうとしたが、孔明はおもてを振って、左右の者にもいった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、当然な挨拶があったので、もちろん佐久間信盛もりょうとして
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賢明な読者は、りょうとして下されているものと思う。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)