みな)” の例文
あこがれ慕う心には、冥土よみじの関を据えたとて、のあくるのも待たりょうか。し、可し、みなかずば私が自分で。(と気が入る。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして後に続く言葉はとても変梃なもので、「君子固より窮す」とか「者ならん」の類だからみなの笑いを引起し店中にわかに景気づいた。
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
されどるにも位列ゐれつをなしてみだりならず。求食あさる時はみなあさり、あそぶ時はみなあそぶ。雁中がんちゆうに一雁ありて所為なすところみなこれにしたがふ、大将たいしやう士卒しそつとのごとし。
「島、お前よく考えてごらんよ。みなさんの前でそんな御挨拶をして、それで済むと思っているのかい。義理としても、そうは言わせておかないよ。真実ほんとあきれたもんだね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その草尽くる時その竿を収め、今一つの竿に草を附けてやらばまた踏み戻して食む。幾度もこうしてついに土上に戻る馬の口を取りて引き返し、みな大いに悦び老人を賞賜したてふ事じゃ。
彼は自分の心をみなから離れた遠い所に置いて、其処から今一度病める叔父とたえ子と彼自身と三人鼎坐している情景シインをふり返ってみた。すると自分一人が其処から遠く遠く離れて行くような気がした。
恩人 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
みなおおいに興じきっと小兎が出来るのだろうと言った。三太太は子供等に対して戒厳令を下し、これから決して捉まえてはなりませんぞという。
兎と猫 (新字新仮名) / 魯迅(著)
白雪 ええ、うらめしい……この鐘さえなかったら、(とじって、すらりと立直り)みなに、ここへ来いとお言い。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みなさんがそう言って下さいます」お島は赤い顔をして、サンプルを仕舞っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
神明かの男が実心まごゝろあはれみ、人々のいのりをも納受なふじゆまし/\けん、かの娘目のさめたるがごとくおきあがり母をよびければ、みな奇異きゐのおもひをなし、むすめのそばにあつまりていかに/\といふ。
だからみなが罷業の継続を主張すると、彼はまだ一度もその場に臨んだことはないが、しんから悦服して公共の決議を守った。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
白雪 お返事を上げよう……一所に——椿や、文箱ふばこをお預り。——みなも御苦労であった。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みなは家へ帰って寝てしまったが、阿五はまだ咸亨酒店の櫃台スタンドに凭れて酒を飲み、老拱もまたほがらかに唱った。
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)
その手を見ると泥だらけで、足で歩いて来たとは思われないが、果してその通りで、彼はみなの笑い声の中に酒を飲み干してしまうと、たちまち手を支えて這い出した。
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
みなが一人の悪人を食った小作人の話もまさにこの方法で、これこそ彼等の常用手段だ。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
しかし彼はみなと一緒に金の催促にはゆかない。やはりいつものようにお役所の中に坐り込んでいる。彼は一人偉がっているのじゃないかと疑う人もあったが、それは一種の誤解に過ぎない。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
罪祟りを恐れているから、みなの者が連絡を取って網を張り詰め、わたしに自害を迫っているのだ。四五日このかた往来の男女の様子を見ても、アニキの行動を見ても八九分通りは悟られて来た。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
しかしみな罷業ひぎょうすれば講堂には出ない。政府は「授業をすればお金をやる」と声明したが、この言葉は彼にとっては非常に恨めしかった。まるで果実を見せびらかして猿を使うようなものである。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)