蟄居ちつきよ)” の例文
〔評〕或ひと岩倉公幕を佐くとざんす。公薙髮ていはつして岩倉邸に蟄居ちつきよす。大橋愼藏しんざうけい三、玉松みさを、北島秀朝ひでとも等、公の志を知り、深く結納けつなふす。
幕府の一片の命令で蟄居ちつきよ国替くにがへ、減石、断絶せしめられるので、その何れも今の内閣が地方官の変更任免を奏請するよりも、まだ容易であつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
其上、綱宗は品川の屋敷に蟄居ちつきよして以来、仙台へは往かずに、天和てんな三年に四十四歳で剃髪ていはつして嘉心かしんと号し、正徳しやうとく元年六月六日に七十二歳で歿した。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それからその後慶長けいちやう元和げんなの頃、京の圓光寺の長老がゆゑあつて近江蟄居ちつきよの時、琵琶湖付近の景を瀟湘八景に擬して當時の人々から詩歌などを得た。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
刺戟しげきからかへるはまだ蟄居ちつきよ状態じやうたいりながら、まれにはそつちでもこつちでもくゝ/\とすことがある。そらからひかりはそろ/\と熱度ねつどして、つちはそれをいくらでもうてまぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
めてからは、一日外へ出ないで、何時でも蟄居ちつきよして居るんです。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
かはやの涼気のその中に、御執心にも蟄居ちつきよした。
つかはすとの御意にていとまになり又たさくの方もすぐながの暇となり意伯と夫婦に成べしとの御意にて是も五人扶持くだし置れしかば意伯いはくはお作の方と熊野くまの山奧やまおく蟄居ちつきよし十七年目にて御目通りなし又増扶持として五人扶持下し置れ都合つがふ十五人扶持にて平野村ひらのむらに住居し名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二十一歳の時、叔父伊達兵部少輔宗勝だてひやうぶせういうむねかつを中心としたイントリイグに陥いつて蟄居ちつきよの身となつた。それから四十四歳で落飾らくしよくするまで、一子亀千代の綱村つなむらにだに面会することが出来なかつた。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
罷めてからは、一日いちんち外へ出ないで、何時でも蟄居ちつきよして居るんです。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)