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薄陽
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うすび
ふりがな文庫
“
薄陽
(
うすび
)” の例文
薄陽
(
うすび
)
の射した天気だつたが、馬鹿に風の強い日だつた。電車の中も、硝子はあらかたこはれてゐたので、氷の室が走つてゐるやうに寒かつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
遅々
(
ちち
)
としてヨンヌの平野をのたくりゆくうち、ようやく
正午
(
ひる
)
近く、サンの町の教会の尖塔が、向うの丘の
薄陽
(
うすび
)
の中に浮びあがって見えるところまで辿り着いた。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
十二月の初旬のころでところどころ
薄陽
(
うすび
)
の
射
(
さ
)
している陰気な空から、ちらりちらり
雪花
(
ゆき
)
が落ちて来た。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
手に抱えていては邪魔だと思って竹置場の青竹の蔭へかくして置いた
出目洞白
(
でめどうはく
)
の面箱を引ッさらってゆく男の影が、隅田川に
薄陽
(
うすび
)
を落した夕
靄
(
もや
)
をかすめて逃げて行く。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
下
(
しも
)
に飛び飛びの岩、岩もまた幽けかりけり。冬はなほ幽けかりけり。あなあはれ、欅の枯木行き行けば見る眼に聳え、滝落ちてかげり
陽
(
び
)
迅し、あなあはれ、山の端
薄陽
(
うすび
)
。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
があっと音のするような感じで
瞬
(
またた
)
く間に空がくもるのだ。そうすると向側の家を撫でていた
薄陽
(
うすび
)
がふっと影って、白い歩道の石に小さな黒点がまばらに散らばり出す。きょうも雨だ。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
横から見るとすこし猫背だ。両手をきちんと袴のまちへ納めて、すウッすッと
擦
(
す
)
り足である。見ようによっては、恐ろしく
苦味
(
にがみ
)
走って見える横顔に、元日の
薄陽
(
うすび
)
がちらちらと影を踊らせている。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
やがてまたホンノリと、
薄陽
(
うすび
)
がさしてきた。彼はまだ身体一つ動かさず、破れた壁を
見詰
(
みつ
)
めていた。雨が
上
(
あが
)
ったら、どこからか妻がキイキイ声をあげながら、小屋へ駈けこんでくるように感じられた。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すぐ
立座
(
りつざ
)
行装触
(
ぎょうそうぶ
)
れ、
潮
(
うしお
)
のような人が動いて帰城となったが、松平家の幕屋と京極方の二所ばかりは、悲喜転倒のありさまで、
薄陽
(
うすび
)
の暮るるころまで人影が去らなかった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
下
(
しも
)
に飛び飛びの岩、岩もまた
幽
(
かす
)
けかりけり。冬はなほ幽けかりけり。あなあはれ、欅の枯木、行き行けば見る眼に聳え、滝落ちてかげり
陽
(
び
)
迅
(
はや
)
し。あなあはれ、山の端
薄陽
(
うすび
)
。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
白い花を持った
躑躅
(
つつじ
)
や、紅い桃、ぎんなんの木、紅葉、
苔
(
こけ
)
の厚く敷いた植木鉢が
薄陽
(
うすび
)
をあびて青々としていた。庭が狭いので、屋根の上に植木を置いて愉しむ気持ちを面白いとおもった。
田舎がえり
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
午
(
ひる
)
過ぎになると、低く垂れさがった雨雲の間から
薄陽
(
うすび
)
がもれはじめ、嵐はおいおいおさまったが
海面
(
うなづら
)
はまだいち面に物凄く泡だち、寄せかえす怒濤は轟くような音をたてて岸を噛んでいた。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
黒服の
聖
(
サン
)
モウル派。ノウトルダムの高塔。
薄陽
(
うすび
)
。マルセイユ出帆。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
薄陽
(
うすび
)
と河風を顔の
正面
(
まとも
)
にうけて源三郎は、駒の
足掻
(
あが
)
きを早めた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
広い森林地帯の中のユヱへの植民道路をかなり走つてから、やつと四囲に
薄陽
(
うすび
)
が
射
(
さ
)
し始め、晴々と夜が明けて来た。陽が射して来ると、空気がからりと乾いて、空の高い、
爽涼
(
さうりやう
)
な夏景色が
展
(
ひら
)
けて来た。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
たまたまに障子にあかる
薄陽
(
うすび
)
のいろうれしとは見れどすぐ
昃
(
かげ
)
りつつ
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
かよわなる
薄陽
(
うすび
)
の
光線
(
ひすぢ
)
射干
(
ひあふぎ
)
の細葉は透けど早や
消
(
け
)
なむとす
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
たまさかに
明
(
あか
)
る
薄陽
(
うすび
)
のか遠くて夕さり寒し蒲の穂の
立
(
たち
)
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
薄
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
陽
常用漢字
小3
部首:⾩
12画
“薄”で始まる語句
薄
薄暗
薄紅
薄明
薄暮
薄縁
薄荷
薄闇
薄汚
薄氷