蒼白あをしろ)” の例文
しばらく黙然もくねんとして三千代の顔を見てゐるうちに、女のほゝからいろが次第に退しりぞいてつて、普通よりはに付く程蒼白あをしろくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今一人は十八か、九にはいまだと思はるるやうの病美人びやうびじん、顔にも手足にも血の気といふもの少しもなく、透きとほるやうに蒼白あをしろきがいたましく見えて、折から世話やきに来てゐたりし、差配が心に
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
代助は蒼白あをしろく見える自分の脳髄を、ミルクセークの如く廻転させるために、しばらく旅行しやうと決心した。始めはちゝの別荘に行くつもりであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三千代はそれ以上をかたらなかつた。代助もそれ以上を聞く勇気がなかつた。たゞ蒼白あをしろい三千代の顔を眺めて、そのうちに、漠然たる未来の不安を感じた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
曝露ばくろがまともに彼等かれら眉間みけんたとき、彼等かれらすで徳義的とくぎてき痙攣けいれん苦痛くつうつてゐた。彼等かれら蒼白あをしろひたひ素直すなほまへして、其所そこほのお烙印やきいんけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それへ東窓ひがしまどれる朝日のひかりが、うしろから射すので、かみ日光さかいの所がすみれ色にえて、きたつきかさ脊負しよつてる。それでゐて、かほひたひも甚だくらい。くらくて蒼白あをしろい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「えゝ。出来できたの」と云つた。大きな黒いが、まくらいた三四郎の顔のうへに落ちてゐる。三四郎はしたから、よし子の蒼白あをしろひたひを見上げた。始めて此女このをんなに病院で逢つたむかしを思ひした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)