荘厳しょうごん)” の例文
旧字:莊嚴
花によって荘厳しょうごんされているということで、仏陀への道を歩む人、すなわち「菩薩ぼさつ」の修行をば、美しい花にたとえて、いったものです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
あまり荘厳しょうごんを極めた建て物に、故知らぬ反感までそそられて、廊を踏み鳴し、柱を叩いて見たりしたものも、その供人ともびとのうちにはあった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そして越えて三月中に、発願の如く釈迦牟尼むに如来とその脇士きょうじ(薬王、薬上の二菩薩)と、三尊の像が完成し荘厳しょうごん安置せられた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
十万の浄土も荘厳しょうごんなにぞと尋ぬれば、みなみな黄金ずくめなり、孔子も老子も道をかたりひろめし中には、今日のろくを第一に述べられしなり。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
真言しんごんのうちでも封教となっておる秘密なきょうだ。それへ勝手な教義や荘厳しょうごんを加え、宮中でおすすめしているばかりでない。
画像が行なわれたのは同経に「まさに我が像を画き種々の瓔珞ようらくもて周帀しゅうそう荘厳しょうごんすべし」とあるによったものと思われる。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
まずこの力を破らなければ、おお、南無大慈大悲の泥烏須如来デウスにょらい! 邪宗じゃしゅう惑溺わくできした日本人は波羅葦増はらいそ天界てんがい)の荘厳しょうごんを拝する事も、永久にないかも存じません。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すさまじきまで凝り詰むれば、ここ仮相けそう花衣はなごろも幻翳げんえい空華くうげ解脱げだつして深入じんにゅう無際むさい成就じょうじゅ一切いっさい荘厳しょうごん端麗あり難き実相美妙みみょう風流仏ふうりゅうぶつ仰ぎて珠運はよろ/\と幾足うしろへ後退あとずさ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
考えるとせっせと一生かかって殿堂を築きそれを荘厳しょうごんしているのである。いわば美のお寺を建てているのである。なぜそんなことをするのか。穢土のままではいたたまれぬからである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この世ならぬ、荘厳しょうごんと美とに輝く浄土のおもかげがわしの前にひらかれた。わしの魂は不思議な幸福で満たされた。地上の限りを越えたその幸福をわしはなんと言って表わしていいかわからない。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
すべて地獄極楽の荘厳しょうごん形容にわたりたることは、その苦楽の一端を知らしむるために、われわれの感覚に訴えたるものに過ぎざれば、これもとより枝末のことにして、これをかれこれ評するものも
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そうでなくても、経文の上に伝えた浄土の荘厳しょうごんをうつすその建て物の様は想像せぬではなかった。だがのあたり見る尊さは唯息を呑むばかりであった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
一室を浄治し、あるいは空閑くうげん阿蘭若処あらんにゃしょにありて瞿摩ぐまを壇とし、栴檀香せんだんこうきて供養をなし、一勝座を置きて、旛蓋ばんがいもて荘厳しょうごんし、もろもろの名華を以て壇内に布列せよ。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
壁画も鮮かな色彩のままに浄土の荘厳しょうごんを現出していたであろうし、百済観音も天蓋の天人も、おそらく極彩色で塗られ、ことによるとしつこいほど華麗なものだったかもしれぬ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
いや、悪事ばかり働いたわたしは、「はらいそ」(天国)の荘厳しょうごんを拝する代りに、恐しい「いんへるの」(地獄)の猛火の底へ、逆落さかおとしになるかも知れません。しかしわたしは満足です。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夕闇の上に、目を疑うほど、鮮やかに見えた山の姿。二上山である。その二つの峰の間に、ありありと荘厳しょうごんな人のおもかげが、瞬間あらわれて消えた。あとは、真暗な闇の空である。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)