みせ)” の例文
鳩居堂きゅうきょどう方寸千言ほうすんせんげんという常用の筆五十本線香二束にそくを買い亀屋かめやみせから白葡萄酒しろぶどうしゅ二本ぶらさげて外濠線そとぼりせんの方へ行きかけた折であった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
客窓の徒然つれづれなぐさむるよすがにもと眼にあたりしままジグビー、グランドを、文魁堂ぶんかいどうとやら云えるみせにてうて帰りぬ。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
許宣も人の家の主管ばんとうをして身を縛られるよりも、自由にじぶんみせを持ちたかった。彼は白娘子のことばに動かされた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ひとゝせ是を風入れするためみせにつゞきたるしきの障子しやうじをひらき、年賀の帖をひらならべおきたる所へ友人いうじん来り、年賀の作意さくい書画のひやうなどかたりゐたるをりしも
床の間の香炉からは、始終紫色の香の煙が真っ直ぐに静かに立ち昇って、明るい暖かい室内をきしめて居た。私は時々菊屋橋ぎわみせへ行って白檀びゃくだん沈香じんこうを買って来てはそれをべた。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
三日した探梅日和たんばいびよりに、牛の御前の長命寺へ代々の墓詣りにとだけ言い遺して、丁稚でっちに菓子折を持たせたまま瓦町は書替御役所前の、天王様に近い養家清水屋のみせを彼はふらりと出たのであった。
ひとゝせ是を風入れするためみせにつゞきたるしきの障子しやうじをひらき、年賀の帖をひらならべおきたる所へ友人いうじん来り、年賀の作意さくい書画のひやうなどかたりゐたるをりしも
白娘子はいつの間にか家へ帰っていたが、許宣に話したいことがあるのかそっとみせへやって来た。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夏から秋へかけての日盛ひざかりに、千葉県道に面したあきなみせでは砂ほこりを防ぐために、長い柄杓ひしゃくどぶの水を汲んでいていることがあるが、これもまたわたくしには、溝の多かった下谷したや浅草あさくさの町や横町よこちょう
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
翌朝になって許宣は平生いつものように早くからみせへ往ったが、白娘子のことが頭に一ぱいになっていて、仕事が手につかないので、午飯ひるめしの後で口実をこしらえて舗を出て、荐橋の双茶坊へ往った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
くついのを穿いて、官巷のみせへ往って李将仕に逢った。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)