ぞう)” の例文
旧字:
長いことしんぞうに耳を当てたりしたあげく、とど遺骸と見極めたのだから、よもやそこらに抜かりはあるまい、常吉はこう言い張った。
けれど淵辺には宮のおん目とお口がカッと開いて、せつな、自分の五ぞうぶりついて来そうな形相ぎょうそうに見えたのかもしれなかった。
ゆえにこの間に結ばるる夢はいたずらに疲労ひろうせる身体のまぼろしすなわちことわざにいう五ぞうわずらいでなく、精神的営養物となるものと思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼はその名を胸の奥のしんぞうにきざみつけて、一生を守りどおして来たのである。忘れるどころではない。
それと同時に自分のねらっているまとは、即ち自分のしんぞうだと云う事が分かりました。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
死骸を少し動かして、えりのあたりをはだけて見ると、左の背——ちょうど肩胛骨けんこうこつの下のあたりに、小さく肉の炸裂さくれつしているのは、ここからしんぞうまで、ひとえぐりにした刃物のあとでしょう。
成経 故郷こきょうの便りはわしのぞうをかきむしるような気がする。不幸なわしの家族はどんなにわしを待っているだろう。彼らに一度会う日の夢は、わしのこの荒いみじめな生活のただ一つの命であった。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ハンスのしんぞうは、かげながら、にこにこがおです。
やをら動かし、交睫まどろみめたるほどにしんぞう
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ぞうわずらい、腹腑ふくふを腐らしたような重病人も、麻肺湯まはいとうを飲ますと、須臾しゅゆの間に昏睡して、仮死の状態になります由で、すなわち彼は、とうをとって、腹を解剖ひらき、臓腑を薬洗やくせんして
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御手みてにはわれがしんぞう御腕おんかひなにはあてやかに
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ぞうの疲れ——であろうか。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この横木こそ、琵琶の体を持ち支えている骨であり、ぞうでもあり、心でもありまする。——なれど、この横木とても、ただ頑丈に真っ直に、胴をめているだけでは、なんの曲もございませぬ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)