膝小僧ひざこぞう)” の例文
『ああまだ膝小僧ひざこぞうにもとゞいてないよ。さうさな、やすみなしの直行ちよくかう夕方ゆふがたまでにはけるだらう。これからが大飛行だいひこうになるんだ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
その上男はこの寒いのに膝小僧ひざこぞうを少し出して、こんの落ちた小倉こくらの帯の尻に差した手拭てぬぐいを抜いては鼻の下をこすった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二十四五の苦み走ったい男、藍微塵あいみじんの狭いあわせ膝小僧ひざこぞうを押し隠して、弥蔵に馴れた手をソッと前に揃えます。
まさか、壺皿つぼざらはなかつたが、驚破すはことだと、貧乏徳利びんぼふどくり羽織はおりしたかくすのがある、誂子てうしまた引挾ひつぱさんで膝小僧ひざこぞうをおさへるのがある、なべ盃洗はいせんみづ打込ぶちこむのがある。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よく膝小僧ひざこぞうをかかえて、生暖かい日射ひざしを正面から浴びながら、放心したような時間にはいった。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
私の髪はほどけて、ゆかたのすそからは膝小僧ひざこぞうさえ出ていました。あさましい姿だと思いました。
灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
苛々いらいらすると自転車に乗って飛びだして、帰りには膝小僧ひざこぞうだの腕のあたりから血を流してくることがあった。ガサツな慌て者だから、衝突したり、ひっくり返ったりするのである。
私は海をだきしめていたい (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
すると高一が、膝小僧ひざこぞうをかゝへたまゝ、ニヤ/\笑ひながら云ひました。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
中のお客さん? 二人は驚いて後をふりかえって見ると、今まで一向気がつかなかったが、その函の片隅に薄汚い洋服を着た中年の男が、膝小僧ひざこぞうを抱えてよりかかっていた。睡っているらしい。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
間もなく、下っ引に案内されて、恐る恐る膝小僧ひざこぞうを揃えたのは、昨夜ゆうべのお燗番——磯屋の庭掃き卯八でした。
其上そのうへをとここのさむいのに膝小僧ひざこぞうすこして、こんちた小倉こくらおびしりした手拭てぬぐひいてははなしたこすつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
膝小僧ひざこぞうをかくす事が出来ないくらいの短い古外套ふるがいとうを着て、いつも寒そうにぶるぶる震えて、いつか汽車に乗られた時、車掌は先生を胡散うさんくさい者と見てとったらしく、だしぬけに車内の全乗客に向い
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
間もなく、下つ引に案内されて、恐る/\膝小僧ひざこぞうを揃へたのは、昨夜ゆうべのお燗番——磯屋の庭掃にはは八でした。
八五郎のガラッ八は、銭形平次の前に、神妙らしく膝小僧ひざこぞうを揃えました。
ガラッ八はくびのところを掻きながら、膝小僧ひざこぞうを揃えました。
狭い着物から、膝小僧ひざこぞうがはみ出します。