聞込ききこ)” の例文
刈谷音吉かりやおときちは、最近さいきんのことだが、だいぶたくさんに金塊きんかいいこんでいたそうですよ。ふる小判こばんなどもあるそうで、これは地金屋ぢがねやからの聞込ききこみですが」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
何時いつ不断着ふだんぎ鼠地ねずみじ縞物しまもののお召縮緬めしちりめん衣服きものを着て紫繻子むらさきじゅすの帯をめていたと云うことを聞込ききこんだから、私も尚更なおさら、いやな気がおこって早々に転居してしまった。
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
近来飛騨に銀山がひらかれて、坑夫を募集しているという噂を聞込ききこんだので、彼は同じ仲間の熊吉くまきちと云う老坑夫をさそって、殆ど三十年ぶり故郷ふるさとの土を踏んだのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
図に乗気味のりぎみに、田の縁へ、ぐっとしゃがんで聞込ききこむ気で、いきなり腰を落しかけると、うしろ斜めに肩を並べてひさしの端を借りていた運転手の帽子を傘でたたいて驚いたのである。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雲水空善は腹痛を起して、店の奥に横になって居るうちに大変な事を聞込ききこんでしまいました。店を出て行く二人の後ろ姿を見送りながら、頭陀袋ずだぶくろから手紙を取出して読み直すと
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
中津なかつ出帆しゅっぱんの時から楽しんで居た処が、神戸に上陸して旅宿やどやついて見ると、東京の小幡篤次郎おばたとくじろうから手紙が来てあるその手紙に、昨今京阪の間はなはだ穏かならず、少々聞込ききこみし事もあれば
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
平松刑事ひらまつけいじは、ほかの方面ほうめんでの聞込ききこみをあさりにかけていたから、しょかえつてすぐに、井口警部いぐちけいぶまえばれた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
家老が以前に自分の持て居る原書一冊を奥平藩に二十何両かで売付けたことがあるその事を聞込ききこんだから私がいったので、しも否めばお前さんはドウだと暴れてろうと云う強身つよみの伏線がある
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
二人ふたりもんまえ口争くちあらそいをしていたのをみたという、近所きんじょひとからの聞込ききこみもないではない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
所でその時江戸の藩邸に金のあることを聞込ききこんだから、即案にい加減な事を書立かきたて、何月何日頃何の事で自分の手に金の這入はいる約束があると云うような嘘をこしらえて、誠めかしく家老の処にいっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)