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罹災
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りさい
ふりがな文庫
“
罹災
(
りさい
)” の例文
その間に私は二度も
罹災
(
りさい
)
していた。「お伽草子」を書き上げて、その印税の前借をして私たちはとうとう津軽の生家へ来てしまった。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
乗杉の
住居
(
すまい
)
も無論同時に
罹災
(
りさい
)
していたに違いない。いろいろ思い合わせればなお更のことである。俳句の下には吐志亭と署名してある。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
本郷の南から神田にかけての一帯が焼けたとき、Hさんはまだ
産婆
(
さんば
)
学校へ通つてゐたので、やはり湯島の本宅で
罹災
(
りさい
)
したのださうです。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
たまたまその
罹災
(
りさい
)
証明が手にはいったので、伊沢は埼玉へ買出しにでかけ、いくらかの米をリュックに背負って帰って来た。
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
一般
罹災
(
りさい
)
民の臨時休憩所に当てられていた一室に収容されて、午後三時頃まで休ませて
貰
(
もら
)
っていたが、やがて雨が
止
(
や
)
み、水が徐々に
退
(
ひ
)
き始めたので
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
二十二年の秋、将来、こういうこともあり得るだろうと予想して、空襲直後のどさくさに、よその町内で貰った仮名の
罹災
(
りさい
)
者証明書を持って大阪へ行った。
虹の橋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
爆心地で
罹災
(
りさい
)
して毛髪がすっかり脱けた
親戚
(
しんせき
)
の男は、
田舎
(
いなか
)
の奥で
奇蹟
(
きせき
)
的に健康をとり戻し、惨劇の年がまだ明けないうちに、田舎から新しい細君を
娶
(
めと
)
った。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
十月二日小雨の
歇
(
や
)
んだ後、夜
亥
(
い
)
の刻に大地震が起った。枕山湖山毅堂の三家は各
罹災
(
りさい
)
の詩を賦している。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
罹災
(
りさい
)
以来そのあと始末に四ヵ月を費して、まだほんとうに落着かないのは、まったく困ったことである。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
呉用は命じて、城中の財宝、穀物、
織布
(
しょくふ
)
などを取り出させ、これを
罹災
(
りさい
)
の民と貧民に
頒
(
わ
)
けてやり、また残余の物と軍需品は、馬や車輛に積んで、梁山泊へ持ち帰った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「こちらから甲府へゆかれましてね、甲府で
罹災
(
りさい
)
して、それからお国へお帰りになったのです。」
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
この道理をよくよく推し極めてみれば、世に真の不幸者なく、真の
罹災
(
りさい
)
者なく、長き年月の間に吉凶禍福の差し引きを立つれば、さほどの損もなければ、得もないことが分かります。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
その五階の建物も、三階までは
罹災
(
りさい
)
しました。後でその構内へ落された
焼夷弾
(
しょういだん
)
を拾い集めたら、幾百とあったそうで、その殻が小山のように積んでありました。落ちた折の恐ろしさが想像せられます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
そうしてあなたも
罹災
(
りさい
)
して生れた土地の金木町に来ているという事を、あなたの作品に依って知り、再び胸のつぶれる思いが致しました。
トカトントン
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大正十二年の
罹災
(
りさい
)
によつて一時はその数を三分の一にも減じた水上生活者の群が、いつとは知れず再び元通りの数に近づかうとしてゐた頃の或る夏近くのことであるが
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
狼狽
(
ろうばい
)
混乱、どうにもしようのないのが当りまえであるかも知れないが、
罹災
(
りさい
)
以来そのあと始末に四ヵ月を費して、まだほんとうに落付かないのは、まったく困ったことである。
十番雑記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それと同じく西洋の事を知ろうとするには何がさて置き
基督
(
キリスト
)
教の何たるかを知って置かねばならぬと、
晩蒔
(
おそまき
)
ながら心づいた故である。
罹災
(
りさい
)
の後わたくしは今だに空しくそれらの書をさがしている。
仮寐の夢
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
僕は二度も
罹災
(
りさい
)
して、とうとう、故郷の津軽の家の
居候
(
いそうろう
)
という事になり、毎日、浮かぬ気持で暮している。君は未だに帰還した様子も無い。
未帰還の友に
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そればかりか
罹災
(
りさい
)
のつい二三日前にも、ちやうどHさんが夕方ひとりで店番をしてゐた時、姉さまが心配さうな蒼い顔をして、小児用のイチジク
灌腸
(
かんちょう
)
を買ひに見えたのださうです。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
その死因は脳充血とか心臓破裂とか急性腎臓炎とか大腸
加答児
(
カタル
)
とかいうような、急性の病気が多かったらしい。それには
罹災
(
りさい
)
後のよんどころない不摂生もあろう。罹災後の重なる心労もあろう。
九月四日
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
東京で
罹災
(
りさい
)
したと言って、何の前触れも無く、にやにや笑ってこの家へやって来て、よくもまあ恥かしくもなく
冬の花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「うん、成金趣味さ。でも、あんなヘボ
画
(
え
)
かきにはもったいない。悪運が強くて
罹災
(
りさい
)
も、しやがらねえ。利用せざるべからずさ。さあ、寝よう、寝よう」
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それが、二度も
罹災
(
りさい
)
して、行くところが無くなり、ヨロシクタノムと電報を発し、のこのこ生家に乗り込んだ。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
罹災
(
りさい
)
したおかたには皆おぼえがある
筈
(
はず
)
だが、罹災をすると、へんに郵便局へ行く用事が多くなるものである。
親という二字
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
本屋からの注文がぱったり無くなり、そのうちに二度も
罹災
(
りさい
)
して、いやもう、ひどいめにばかり遭いましたが、しかし、私はその馬鹿親に孝行を尽そうと思いました。
返事
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
京橋のアパートで
罹災
(
りさい
)
なさって、それから今の御住所にお移りになった事を直治から聞きまして、よっぽど東京の郊外のそのお宅にお伺いしようかと思ったのですが
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
愚図
(
ぐず
)
々々と都会生活の安逸にひたっていたのが失敗の基である、その点やはりあなたがたにも罪はある、それにまた、
罹災
(
りさい
)
した人たちはよく、焼け出されの丸はだかだの
やんぬる哉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と思って、この商売一つにかじりついて来て、どうやら
罹災
(
りさい
)
もせず終戦になりましたのでほっとして、こんどは大ぴらに闇酒を仕入れて売っているという、手短かに語ると
ヴィヨンの妻
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
雑誌社は
罹災
(
りさい
)
し、その上、社の重役の間に資本の事でごたごたが起ったとやらで、社は解散になり、夫はたちまち失業者という事になりましたが、しかし、永年雑誌社に勤めて
おさん
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
また
罹災
(
りさい
)
しないまでも、物資不足やら手不足やらで閉鎖した病院も少くなかったようで、長期の入院を必要とするたくさんの結核患者、特に僕たちのようにあまり裕福でない患者たちは
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
二度も
罹災
(
りさい
)
する前に、もっと早く故郷へ行っておればよかったのにと
仰言
(
おっしゃ
)
るお方もあるかも知れないが、私は、どうも、二十代に於いて肉親たちのつらよごしの行為をさまざまして来たので
庭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私は昨年
罹災
(
りさい
)
して、この津軽の生家に避難して来て、ほとんど毎日、神妙らしく奥の部屋に閉じこもり、時たまこの地方の何々文化会とか、何々同志会とかいうところから講演しに来い、または
親友交歓
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私たちは東京で
罹災
(
りさい
)
してそれから甲府へ避難して、その甲府でまた丸焼けになって、それでも戦争はまだまだ続くというし、どうせ死ぬのならば、故郷で死んだほうがめんどうが無くてよいと思い
たずねびと
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「それは、たいへんだね。やっぱり
罹災
(
りさい
)
したのですか。」
たずねびと
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“罹災”の意味
《名詞》
罹災(りさい)
災害に遭うこと。被災すること。
(出典:Wiktionary)
罹
漢検1級
部首:⽹
16画
災
常用漢字
小5
部首:⽕
7画
“罹災”で始まる語句
罹災者
罹災民
罹災後
罹災者寮