縫物ぬひもの)” の例文
なにとはなしにはりをもられぬ、いとけなくて伯母をばなるひと縫物ぬひものならひつるころ衽先おくみさきつまなりなど六づかしうはれし
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小さな村の出はづれにあるセンイチのうちには、おかみさんのセイが一人で、もう夕食の仕度をしてしまつて、センイチが帰るのを待ちながら、縫物ぬひものをしてゐました。
悪魔の宝 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
彼女は縫物ぬひものをしてゐた。私はそれを見てゐた。リード夫人はその頃三十六七だつたらう。
女房にあづなほ又江戸表より一年に五六兩づつは送る約束やくそくにて其身は三十兩懷中くわいちうし享保三年のふゆあづまそらへ下りたり彦兵衞が女房は至つて縫物ぬひものめうを得たる故諸處より頼まれ相應さうおう縫錢ぬひせん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小半日この音を聞かされて、縫物ぬひものをし乍ら、すつかり氣をくさらして居ります。
あをり縫物ぬひもの
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
仕立したてかけの縫物ぬひものはりどめしてつは年頃としごろ二十餘はたちあまりの意氣いきをんなおほかみいそがしいをりからとてむすがみにして、すこながめな八丈はちぢやうまへだれ、おめしだいなしな半天はんてん
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし三名だけが讀めるのみで——誰一人、書くことも算用さんようも出來ないのだつた。數人の者は編物あみものができ、極く僅かの者がほんの少し縫物ぬひものが出來る。彼等はその地方のむき出しのなまりを使つてゐる。