きび)” の例文
彼少女は粗暴なる少年に車をかれて、かつおそれ且は喜びたりき。彼少女は面紗めんさきびしく引締めて、身をば車の片隅に寄せ居たり。
千一夜譚サウザンドナイツ・エンド・ア・ナイト』に海商シンドバッド一友と樹に上り宿すると夜中大蛇来てその友を肩からみおわりきびしく樹幹をまとうて腹中の人の骨砕くる音が聞えたと出で
しかし革紐がきびしく張っているのと、痙攣のように体が顫うのとを見れば、非常な努力をしているのが知れる。ある恐るべき事が目前に行われているのが知れる。
若僧は先づ自ら尻を高く端折つて蓑を甲斐〻〻しく手早く着けて、そして大器氏にも手伝つて一ツの蓑を着けさせ、竹の皮笠を被せ、其紐をきびしく結んで呉れた。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
二重の玻璃窻ガラスまどきびしく鎖して、大いなる陶爐に火を焚きたる「ホテル」の食堂を出でしなれば、薄き外套を透る午後四時の寒さは殊さらに堪へ難く、はだへ粟立つと共に
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
女はいよいよきびしく抱き付いた。男が、「どうだ、己のいう通りにしないか」と云っても、女は返事をせずに、顔を見上げている。相手のいう事が分からない様子である。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
眠られぬままに過去こしかた将来ゆくすえを思いめぐらせば回らすほど、尚お気がさえて眼も合わず、これではならぬと気を取直しきびしく両眼を閉じて眠入ねいッたふりをして見ても自らあざむくことも出来ず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もうわたしの心も魂もきびしく捉われて
舟人はを棄てゝ、手もて水をかき、われ等は身を舟中に横へしに、ララは屏息へいそくしてきびしく我手を握りつ。暫しありて、舟は大穹窿の内に入りぬ。
若僧は先ずみずから尻を高く端折はしょって蓑を甲斐〻〻かいがいしく手早く着けて、そして大噐氏にも手伝って一ツの蓑を着けさせ、竹の皮笠かわがさかぶせ、そのひもきびしく結んでくれた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夜の舞臺ときびしく使はれ、芝居の化粧部屋に入りてこそ紅粉をも粧ひ、美しき衣をも纒へ、場外にてはひとり身の衣食も足らず勝なれば、親腹からを養ふものはその辛苦奈何いかにぞや。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
狐が介の開けるを見、その肉を食わんとくちばしを突っ込んできびしく締められ、顛倒して悶死した処へ往き会わせたアラビア人が介の口に何か光るを見、破って最高価の真珠を獲たと記す。
きびしく煩悩の鎖に繋がれ、11885
身体中に神経がピンときびしく張ったでもあるように思われて、円味まるみのあるキンキン声はその音ででも有るかと聞えた。しかしまたたちまちグッタリ沈んだていかえって
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こは我生涯の未來の幾齣のために、舞臺の幕をきびしく閉づべき綱なりしを奈何せん。みぬるかな。
夜の舞台ときびしく使はれ、芝居の化粧部屋に入りてこそ紅粉をも粧ひ、美しき衣をも纏へ、場外にてはひとり身の衣食も足らず勝なれば、親腹からを養ふものはその辛苦奈何いかにぞや。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「この度の処分はただ一つしかないとわたくしは思う。玄碩げんせきさんはわたくしの宅で詰腹つめばらを切らせます。小野さんも、おあねえさんも、三坊も御苦労ながらお立会たちあい下さい。」言いおわって貞固はきびしく口を
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)