粗朴そぼく)” の例文
外国物がいこくものでは、アベ=マリアとか、粗朴そぼくながら、のつながりに、哀愁あいしゅうをもよおす日本にほん俚謡りようなどをあには、このみました。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
慇懃いんぎんな態度はひどく粗朴そぼくですが、平次のたくみな質問に引出されて、自分の在所は目黒、ここには、七八年奉公していること、御主人三五兵衛は結構な人だが
函館停車場はごく粗朴そぼくな停車場である。待合室では、真赤にくらい酔うた金襴きんらん袈裟けさの坊さんが、仏蘭西人らしいひげの長い宣教師をつかまえて、色々くだを捲いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
粗朴そぼくな壁に、禅家の墨蹟ぼくせきが懸っているほか、何もないとこをうしろに、秀吉は、至極気楽にあぐらを組んだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其他そのたには薩摩琵琶歌さつまびはうただの漢詩朗吟らうぎんなぞも存在しているが、此れも同じく色彩の極めて単純な日本特有の背景と一致した場合、初歩期の単調が、ある粗朴そぼくな悲哀の美感をもよほさせるばかりである。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ちゝこんぜざる濃茶のうちやよろこび、みづらざる精酒せいしゆみ、沈鬱ちんうつにして敢爲かんいかた國立こくりつ宗教しゆうきようし、ふか祖先そせんげふおもんず、工業こうげうはなはさかんならざるがゆゑ中等社界ちうとうしやくわいそんするところおほくは粗朴そぼくなる農民のうみんにして
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
供も連れていなかった、馬も曳いてきた様子がない、代官萩原年景は、藁草履わらぞうり一つの粗朴そぼく身装みなり
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)