“竜(りょう)” の例文
旧字:龍
いや以ての外(ほか)の騒動だ。外濠(そとぼり)から竜(りょう)が湧(わ)いても、天守へ雷(らい)が転がつても、太鼓櫓(たいこやぐら)の下へ屑屋が溢(こぼ)れたほどではあるまいと思ふ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
禹(う)江(こう)を渡る時、蛟竜(こうりょう)船を追う、舟中(しゅうちゅう)の人皆慴(おそ)る、禹(う)天を仰いで、嘆じて曰(いわ)く、我命(めい)を天に享(う)く、力を尽して、万民を労す、生は寄なり、死は帰なりと、竜(りょう)を見る事、蜿蜓(えんてい)の如く、眼色(がんしょく)変ぜず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
良人(やど)という詞を聞て今日は妬ましいよりは心細いように思われ、いつもの如く後の床柱へ凭(もた)れて、虚と実と二つの竜(りょう)が肚裡(はらのうち)で闘って居ると、歌ちゃんはこの頃のろけ癖が附いたよと婢が云うを
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
呑気なような、ほとんど端倪(たんげい)すべからざる、たとえば竜(りょう)のごとき否、むしろ大雨に就いて竜を黙想しつつありしがごとき、奇体なる人物は、渾名(あだな)を外道(げどう)と称(とな)えて、名誉の順風耳(じゅんぷうに)
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これに加うるに手工細技(さいぎ)に天稟(てんりん)の妙を有する我が国女工を以てす、あたかも竜(りょう)に翼(つばさ)を添うが如し、以て精巧にこれを製出し、世界の市場に雄飛す、天下如何(いかん)ぞこれに抗争するの敵あるを得んや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
門際の流(ながれ)に臨むと、頃日(このごろ)の雨で、用水が水嵩(みずかさ)増して溢(あふ)るるばかり道へ波を打って、しかも濁らず、蒼(あお)く飜(ひるがえ)って竜(りょう)の躍るがごとく、茂(しげり)の下(もと)を流るるさえあるに、大空から賤機山(しずはたやま)の蔭がさすので
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)