祖父おほぢ)” の例文
翁が祖父おほぢの其の祖父すらもうまれぬはるかの往古いにしへの事よ。此のさと一五二真間まま手児女てごなといふいと美しき娘子をとめありけり。
この水浅黄みづあさぎ帷子かたびらはわたしの祖父おほぢの着た物である。祖父はお城のお奥坊主おくぼうずであつた。わたしは祖父を覚えてゐない。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
祖父おほぢさくに、ひさしぶりのはなしがある、と美女たをやめざう受取うけとつて、老爺ぢい天守てんしゆ胡座あぐらしてあとのこつた。ときに、祖父おほぢわがまゝのわびだと言つて、麻袋あさぶくろを、烏帽子えばうしれたまゝ雪枝ゆきえゆづつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その耳面刀自と申すのは、淡海公の妹君、姫様方の祖父おほぢ南家なんけ太政だいじやう大臣には、叔母様にお当りになつてゞ御座りまする。人間の執念と言ふものは怖いものとは思ひになりませんか。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ましろ髯祖父おほぢのみ髯かなしくも手ぐさとる子に垂らしたるはや
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
祖父おほぢよりひさしくここに住み、田ばたあまたぬしづきて家豊かに暮しけるが、生長ひととなりて物にかかはらぬさがより、農作なりはひうたてき物にいとひけるままに、はた家貧しくなりにけり。
祖父おほぢ播磨はりま一四赤松に仕へしが、んぬる一五嘉吉かきつ元年のみだれに、一六かのたちを去りてここに来り、庄太夫にいたるまで三代みよて、一七たがやし、秋をさめて、家ゆたかにくらしけり。