碧眼へきがん)” の例文
隊長シュミット氏は一行中で最も偉大なる体躯たいくの持ち主であって、こういう黒髪黒髯こくぜんの人には珍しい碧眼へきがんに深海の色をたたえていた。
北氷洋の氷の割れる音 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けれども僕の最も深く最もひそかなる愛は、金髪碧眼へきがんの、晴れやかに溌剌とした、幸福で愛想のいい凡庸な人々の所有なのです。
宋江はよろこんで、さっそく彼をやって、城中から皇甫端こうほたんを招きよせた。なるほど碧眼へきがん紅毛の異人種だがりっぱな風采は見るから神医の感をうける。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気の軽い碧眼へきがん夫婦の呼び声に、この陋巷ろうこうのあちこちから腹の減った連中が駆けよって来た。屋台の前は、たちまち栄養不良患者の展覧会のようになった。
これは都人みやこびとの顔の好みが、唐土もろこしになずんでいる証拠しょうこではないか? すると人皇にんおう何代かののちには、碧眼へきがん胡人えびすの女の顔にも、うつつをぬかす時がないとは云われぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
でケティは、もとサーカスの支那驢馬ろば乗りでした。そして白痴なもんで虐待ぎゃくたいをうけていた。すると、その金髪碧眼へきがんに蒙古的な顔という、奇妙な対照が僕の目をひいたのです。
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
黒眼を描かうか碧眼へきがんを現はさうか縮毛ちぢれげか延髪か描き分けようすべもありませんでせうから。
秋の夜がたり (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
このいきもつかず流れている大河たいがは、どのへんから出て来ているだろうかと思ったことがある。維也納ウインナ生れの碧眼へきがん処女しょじょとふたりで旅をして、ふたりして此の大河のながれを見ていた時である。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その男というのは、燃えるような赤毛に、白子のような肌をした碧眼へきがんの大男で、紅毛人こうもうじんを見た事のない平次の眼には、地獄変相図から抜け出した、悪鬼のように恐ろしく映ったでしょう。
碧眼へきがんの幼い少年のあおい顔が、憂わしげに彼を眺めている……。
碧眼へきがんの詩人は案外落ち着いた声でそう言った。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
碧眼へきがん紫髯しぜん、胴長く、脚短く、しかも南人特有な精悍せいかんの気満々たる孫権。槍をふるって、石弾の如く突いてきた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……すると、沖についた白い汽船は、どこの船だか国籍が分らなかったというのだネ。碧眼へきがんの船長は何を君たちに頼んだのか、それを思い出してみなさい」
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見ると、金髪の色といい碧眼へきがんの澄みかたといい、一点、非のうちどころのないドイツ娘である。しかし、それ以外の部分はなんという変りかた⁈ 厚い唇をだらりと空けたさま
人外魔境:03 天母峰 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
オルガンティノは翌日のゆうべも、南蛮寺なんばんじの庭を歩いていた。しかし彼の碧眼へきがんには、どこか嬉しそうな色があった。それは今日一日いちにちの内に、日本の侍が三四人、奉教人ほうきょうにんの列にはいったからだった。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一敵国と見ている国の人間と出会ったように、じろと、碧眼へきがんを、投げたのみで通ってゆく。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、このときはやく、かのときおそく、かの碧眼へきがんの船員は、ぷっと煙草をはきだし
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「思いあがるをめよ、碧眼へきがんの小児、紫髯しぜん鼠輩そはい。まず聞け、まことの将のことばを」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足はみな裸足だが獣骨の足環あしわをはめ、半身の赤銅のような皮膚をき出しているが、腕くびに魚眼や貝殻の腕環うでわをなし、紅毛碧眼へきがんの頭には、白孔雀しろくじゃく極楽鳥ごくらくちょうの羽根を飾って、怪美なこと
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
碧眼へきがんの小児、紫髯しぜん鼠賊そぞく、思いあがるを止めよ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)