矢來やらい)” の例文
新字:矢来
とほきそのむかしらず、いまのをとこは、牛込南榎町うしごめみなみえのきちやう東状ひがしざまはしつて、矢來やらいなかまるより、通寺町とほりてらまち肴町さかなまち毘沙門前びしやもんまへはしつて、みなみ神樂坂上かぐらざかうへはしりおりて
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
矢來やらいの酒井樣御下屋敷にまぎれ込んで、昨夜津志田樣の中間の半次が、宵のうちに來たか來なかつたかそれを訊いて貰ひたいよ。若し來たとしたら、何刻なんどきに來て何刻に歸つたか」
「あ、あれはね(按摩あんま)とつてね、矢來やらいぢや(いわしこ)とおんなじに不思議ふしぎなかはひるんだよ」「ふう」などと玄關げんくわん燒芋やきいもだつたものである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とほりへ買物かひものから、かへつてくと、女中ぢよちうが、いましがたおかへりにつたといふ。矢來やらいつじ行違ゆきちがつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……「それで、矢來やらいから此處こゝまで。」「えゝ。」といきいて、「夢中むちうでした……なにしろ、正體しやうたいを、あなたにうかゞはうとおもつたものですから。」いまむかし山城介やましろのすけ三善春家みよしはるいへ
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
以前いぜん牛込うしごめ矢來やらいおくころは、彼處等あすこいら高臺たかだいで、かへるいても、たまにひとふたつにぎないのが、ものりなくつて、御苦勞千萬ごくらうせんばん向島むかうじまめぐりあたり、小梅こうめ朧月おぼろづきふのを
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)