めま)” の例文
貨幣の下落は、それほど庶民をめまいさせていた。いう迄もなく、物価はハネ上り、ことしも、上り脚の一方をたどっている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身動きするたびに、絹摩きぬずれの音がして、麝香猫じやかうねこのやうなにほひがぷん/\する。男はめまひがしさうになつて来た。
クリスマス前の銀座は、デコレーションの競いで、ことにともし時のめまぐるしさは、流行の尖端せんたんを心がけぬものは立入るべからずとでもいうほど、すさまじい波がどよみうねっている。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この橋高さ一丈余、下は岩石多くそびえて流水深く、かちで渡るもめまうべし。
その一滴一滴が、お通の生命いのちの分解されたものかと思うと、彼はふらふらとめまいを感じ、見るに、顔が青ざめてきた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐらっと、内匠頭は、こめかみに焼鏝やきごてを当てたようなめまいを感じた。口腔くちの渇いているせいか、声が、かすれていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寝不足と疲労で、立ったとたんにめまいがした。部屋部屋の謡声や鼓の音は、燭とともにさかんだったが、それすらちと頭のしんに痛いような気がした。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つかれた鍬と、つかれた呼吸いきとが、次第にもつれ合って、めまいがしそうになって来ても、又八の手は止まらなかった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然し大地に立ってみると、大地が波のように揺れる気がして、物につかまっていないとよろめくようなめまいを覚えた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしこれは、敵方がる心理も同様なのであるから、その殺気にめまいをせず、日頃の丹田たんでんで、沈着に押し迫った方が、じょの勝口を取ることはいうまでもない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
値だんばかりでなく、日本人の体はまだ喫煙の害に馴れないので、めまいを起したり、泡をふいたりする者が多いので、美味うまいけれど、魔薬であると考えられている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一陣の悽風せいふうとともに、稲妻のような青白い一せんを浴び、同時に耐えきれぬめまいにあたまを抱えたまま、二人ともぐるぐる独楽こまみたいに廻って気を失いかけたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はッと思うと、全身の血がのぼって、起ちかけた頭に、ぐらぐらとめまいが来てしまった。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐらぐらとめまいを覚えたらしく、あやうく昏絶こんぜつしそうになったひたいを抑えて、その後
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに姫はうつ向いたきりといってよいほど顔を斜めに俯伏うつぶせている。どうかしてその黒髪をそっと風が越えてくると、蘭麝らんじゃのかおりなのか伽羅きゃらなのか範宴はめまいを覚えそうになった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あのふたりが五条のおばしまで人目もなく並んでいたのを遠くから見たせつな、お通は、足がふるえてしまった。あやうく、めまいがして倒れかけたので、牛車の蔭にかがみ込んでしまったのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすがの張飛も、ふらふらとめまいを覚えて
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)