申立もうしたて)” の例文
衛兵の申立もうしたてとは違って、その持っている提灯には骨があった。しかし剣は着けていなかった、靴も穿いていなかった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
申立もうしたて拒否きょひしたとなつたら、それをいてわせる権限けんげん警察けいさつにもない。訊問じんもんはこれ以上いじょうにはあまりすすまなかつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
林藏も刀の柄元を握詰め喉をいておりますから、如何どういう事かと調べになると、大藏の申立もうしたてに、平素つねからおかしいように思って居りましたが、かねて密通を致し居り
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その申立もうしたてによると、〆蔵はお君がわたしと一緒に暮らしていた時分にも、二、三度逢引をした事もあったとやら。殺意を起したわけはわたしの胸と変りは御在ません。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一方には倫陀療養院から召喚された東作爺が、ロスコー家裏手の日本屋自室で、厳重な取調とりしらべを受けたのであったが、その申立もうしたての内容にも、相当に怪奇な分子が含まれていた。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
常陸国誌ひたちこくし』のしるすところに依れば、鹿島事触ははやく現われ、すでに寛文かんぶん十年(一六七〇)という年に、寺社奉行は大宮司だいぐうじ則教の申立もうしたてに基づいて、彼らの業務を祈祷きとうと札配りとに限定し
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
右門くわだてノ儀ハ、兵学雑談、あるいハ堂上方ノ儀、その外恐入候不敬ノ雑談申散もうしちらし候ハ、其方共申立もうしたてヨリ相知レ候、大弐ハ死罪、右門儀ハ獄門まかり成、御仕おき相立候ニ付、不届ナガラうったえ人ノ事故此処ヲ以テ
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さあ、したにいて、この貴婦人に、犯した罪の申立もうしたてをしろ。
彼が不得要領ふとくようりょう申立もうしたてをすればるほど、疑惑うたがいの眼はいよいよ彼の上にそそがれて、係官は厳重に取調とりしらべを続行した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
金魚屋きんぎょやは、たところまことに好人物こうじんぶつらしいおとこで、つぎのような申立もうしたておこなつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
殊に勘次の申立もうしたてと符合致して居りますからさすがの名奉行にも少し分りかねました。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
身方の連累者の申立もうしたてを土台にして、4795
目「うむ、四郎治其の方は此の者に申付けたとの申立もうしたてじゃが、全く左様か」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
父は私の申立もうしたてを一から十まで信用したかどうか判らないが、とにかくにヘボンの字書ならば買っておいても損はないという料見であったらしい。その当時に於ける彼の字書の信用は偉いものであった。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)