けだもの)” の例文
新字:
多分、鏡臺の上にこぼれた白粉を、牡丹刷毛でくかどうかして、けだものの足跡そつくりの形が出來て、面白がつたこともあるだらう。
ちょうどみなさんが遠足えんそくくときにもちひる水筒すいとうおなじものでありますが、これははじめはけだものかはつくつた水袋みづぶくろからそのかたちたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
けだもののように四つ足を突いて首を前に出していては、到底重い脳みそを頭の中に入れておられるはずのものでない。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
人間をけだもの扱ひにしなくては淺薄だと考へ、人道主義の力説される時は、一切のものに對して無責任無反省に目をつぶつて愛を感じなければならないのだと
私はけだものみたいに我利々々がり/\にも、盲目的な不正にも、そして惡魔みたいに恩知らずにもなれません。その上、私は家庭と係累の中に這入つて行く決心をしてゐます。私はムア・ハウスが好きなんです。
いきなりけだものくさい臭ひがしてきた。
わたしはけだもののやうに靴をひきずり
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
われは情あるけだもの
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
つけて向ふの村へ何處どこでも行きます廣さは十三里と云ますが左樣さうはございません狐が渡るといふのも昔の話でハイ鯉やふな鰻は大層捕れますダガ十月から彼岸時分まで氷で漁は出來ませんナニサ兎は少し取れますがけだもの何處どこ此處こゝも開けたので一疋も居なくなりましたハイ遊廓なんテ見られたもんでは
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
それで、その當時とうじひと住居じゆうきよしたあと海岸かいがん附近ふきんのこつてゐて、かれつてすてた貝殼かひがらや、さかなけだものほねなどがたまつてゐるところがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「そんなものはありやしません。口惜くやしがつて、離屋の縁側に灰をいて置くと、翌る朝その灰の上に、一面のけだものの足跡」
自分はその日からけだものの乳で育てられた。忽ちにして妹が生れた。續いて弟が生れた。又妹が生れた。妹が生れた。弟が生れた。弟が生れた。弟が生れた。弟が生れた。
貝殻追放:016 女人崇拝 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
現在げんざい野蠻人やばんじんなどが、これとおなじような器物きぶつ使つかつてゐるところからかんがへますと、この石匙いしさじけだものかはぐために使用しようしたものに相違そういありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「當り前だ。狼といふものは、猛獸ではあるが、恐ろしく臆病で、滅多に人里に出るけだものぢやないといふよ。それが江戸の眞ん中へ、ノコノコ流れ出てたまるものか」
それは、佐野松さんの惡戯いたづらでした。私の牡丹刷毛を借りて、縁側にいた灰の上へけだものの足跡を拵へたのですが、それつきり私は、牡丹刷毛をしまひ忘れて歸りました。
「飛んだけだものに附合ひさせて、氣の毒だつたなア。お富、その代り、この跡始末は俺がしてやる」