無益むだ)” の例文
かめ「書いた物が何よりの証拠だに、お前が幾許いくら知らないと云っても無益むだだよ、これから分家へ往って話をするから一緒においで」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こいつあ明日あしたになりゃあ勝負がつくのだ、どうせ無益むだにゃあきまってるが明日あした行って見ねえ中は楽みがある、これよりほかにあては無えんだ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
怒らしたものならむと、瞬く隙に見て取つて。もうこの上は詮方がない。弁解いひわけしても無益むだな事。それよりは、ここ一寸を遁れての、分別が肝要と。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
大根おろしのように、身を粉にして動くことを、無益むだも利益もなく、めちゃめちゃに好んだ壮健至極な娘でさえ、ばかばかしいと思ったほどき使った。
それが、無益むだだとみぬけたし、源次という者に執着をもったので、急に独断で方針をかえた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何一ツ入れるべき隠処かくしどころもありません。紙一枚入っておりませんですからあのアンジアンの夜襲も無駄、レオナールの殺害も無益むえきせがれの捕縛も無益むだ、私の努力のすべても無益むだになってしまいました
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
無益むだだと思うといっそのこと公けの沙汰さたにしてしまおうかとの気も起る。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
やっとこなと起かけてみたが、何分両脚の痛手いたでだから、なかなか起られぬ。到底とて無益むだだとグタリとなること二三度あって、さてかろうじて半身起上ったが、や、その痛いこと、覚えずなみだぐんだくらい。
また此が知れたらば女の要らぬ無益むだ心配、其故何時も身体の弱いと、有情やさしくて無理な叱言こゞとを受くるであらう、もう止めましよ止めましよ、あゝ痛
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
なにひとはね疝気せんきおこつていけないツてえから、わたしがアノそれは薬を飲んだつて無益むだでございます、仰向あふむけにて、脇差わきざし小柄こづかはらの上にのつけてお置きなさいとつたんで。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その時裁縫女学校へ通ったという事はかのじょの生涯にとって無益むだなものではなかった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
無益むだにさすのも不憫とは、どこから出し算用ぞや、ふと決断の蟇口開けて、そをら遣らふと、大まかに、掴み出したるしろがねは、なんぼ雪でも多過ぎまする。お狐様じやござりませぬか。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「言ったところで無益むだで御座いますよ」
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
またこれが知れたらば女のらぬ無益むだ心配、それゆえいつも身体の弱いと、有情やさしくて無理な叱言こごとを受くるであろう、もう止めましょ止めましょ、ああ痛
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ついした談話はなしの、いとぐちに、身柄を人に悟られまい、無益むだな金を使用つかふまいと、その用心に、なにもかも、一心一手におさめて置き。天晴れの男に添はせむその時に、拭えぬ曇りは是非もなし。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
夜の眼も合さず雛形まで製造こしらへた幾日の骨折も苦労も無益むだにした揚句の果にひとの気持を悪うして、恩知らず人情無しと人の口端にかゝるのは余りといへば情無い
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
夜の眼も合わさず雛形ひながたまで製造こしらえた幾日の骨折りも苦労も無益むだにした揚句の果てにひとの気持を悪うして、恩知らず人情なしと人の口端にかかるのはあまりといえば情ない
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
知らせて下さらぬ中は無益むだな苦労を妾は為ます、お上人様は何と仰せか、またのつそり奴は如何なつたか、左様真面目顔でむつつりとして居られては心配で心配でなりませぬ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
知らせて下さらぬうちは無益むだな苦労をわたしはします、お上人様は何と仰せか、またのっそりめはどうなったか、そう真面目顔でむっつりとして居られては心配で心配でなりませぬ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)