無断むだん)” の例文
旧字:無斷
しかし、かれひとりとなって、しずかにかんがえたとき、自分じぶんまちからて、遠方えんぽうへいった時分じぶんにも、母親ははおや霊魂たましい無断むだんであったことをおもいました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見せろというなら見せますが、あなたがたがこの室や標本室でやったように、室内の物品に無断むだんで手をつけるのは困るのです。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……で、そのご最期まで見るには忍びないので、とうとう、無断むだん就役中しゅうやくちゅうから脱走して、すべてのご報告だけに参りました
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千世子の頭には無断むだんで自分の書いたものを読まれた事に対して何か云わなければならない様な気持が満ち満ちて居た。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
うもしからぬことをおつしやるねおまへさんは、わたし随分ずゐぶん諸家様しよけさまへお出入でいりをするが、ちりぽんでも無断むだんに持つて来た事はありませぬよ。甚「いゝえそれでもたしかに持つて来なすつた。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その無断むだんで安藤の家をでて、以前交際こうさいした家にちちしぼりをしておった。ようやく見つけてたずねていくと、いつのまにかいなくなる。また見つけだしてたずねると、またいなくなる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
けれども無断むだんで、取りける程、三千代にたいして思ひ切つた振舞が出来できなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
与右衛門さんに自慢話じまんばなしがある。東京者が杉山か何か買って木をらした時、其木が倒れてあやまって隣合となりあって居る彼与右衛門が所有林しょゆうりん雑木ぞうきの一本を折った。最初無断むだんで杉を伐りはじめたのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
玉太郎が寝ている間は、ほとんどそばをはなれたことのないポチが、なぜ今夜にかぎつて無断むだんで出かけてしまったんだろう。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「どこにむかわからないが、てめえもこれからは、無断むだんでほうぼうとんであるくと承知しょうちしないぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ、大手おおて一のもん二の門三の門、人穴門ひとあなもん、水門、間道門かんどうもんの四つの口、すべて一時にまもるための手配てはい。いうまでもなく出門しゅつもんは厳禁。無断むだん持場もちばをうごくべからず——の軍師合図ぐんしあいず
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「君は何物だ。ぼくの実験室へ、無断むだんではいって来たりして……」
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)