“湯船(ゆぶね)” の例文
などと、猫撫聲(ねこなでごゑ)で、仰向(あふむ)けにした小兒(こども)の括頤(くゝりあご)へ、動(いぶ)りをくれて搖上(ゆりあ)げながら、湯船(ゆぶね)の前(まへ)へ、ト腰(こし)を拔(ぬ)いた體(てい)に、べつたりと踞(しやが)んだものなり。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
しかし、そこは、もはや雪(ゆき)が深(ふか)くて、湯船(ゆぶね)は、半分(はんぶん)ほども、雪(ゆき)に埋(う)まっていました。それですから、あたりには彼(かれ)らが食(た)べるような餌(え)が、いくら探(さが)しても、落(お)ちているわけはなかったのでした。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
と言(い)つたが、うつかり手(て)も入(い)れられない。で、ちよこんと湯船(ゆぶね)の縁(へり)へ上(あが)つて、蝸牛(まい/\つぶり)のやうに這𢌞(はひまは)る。が、飛鳥川(あすかがは)の淵(ふち)は瀬(せ)と成(な)つても、此(こ)の湯(ゆ)はなか/\ぬるくは成(な)らぬ。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
すずめは、そこへおりると、そこだけは暖(あたた)かなので雪(ゆき)もなかった。そして、人間(にんげん)が、ついこのごろまで入浴(にゅうよく)をしていたものとみえて、湯船(ゆぶね)のまわりには、いろいろの食(た)べ物(もの)などが落(お)ちていました。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
殺氣(さつき)朦々(もう/\)として天(てん)を蔽(おほ)へば、湯船(ゆぶね)は瞬(またゝ)く間(ま)に、湯玉(ゆだま)を飛(と)ばして、揚場(あがりば)まで響渡(ひゞきわた)る。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
と何か言いたそうに、膝で、もじもじして、平吉の額(ひたい)をぬすみ見る女房の様(さま)は、湯船(ゆぶね)へ横飛びにざぶんと入る、あの見世物の婦(おんな)らしい。これも平吉に買われたために、姿まで変ったのであろう。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)