浮気うわき)” の例文
旧字:浮氣
と深くも考えずに浮気うわきの不平だけを発表して相手の気色けしきうかがう。向うが少しでも同意したら、すぐ不平の後陣ごじんり出すつもりである。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浮気うわき男におなりになるのもやむをえないほどきれいに生まれておいでになる方が、まじめ顔をされてはかえってお価値ねうちも下がるだろうが
源氏物語:45 紅梅 (新字新仮名) / 紫式部(著)
滔々とうとうたる濁水どろみず社会にチト変人のように窮屈なようにあるが、ればとて実際浮気うわき花柳談かりゅうだんうことは大抵たいてい事細ことこまかしって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
嫁はどんなのがいいかと聞かれて、その養子の答えるには、嫁をもらっても、私だとて木石ぼくせきではなし、三十四十になってからふっと浮気うわきをするかも知れない、いや
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
もう二度と浮気うわきはしないと柳吉はちかったが、蝶子の折檻は何の薬にもならなかった。しばらくすると、また放蕩ほうとうした。そして帰るときは、やはり折檻をおそれて蒼くなった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
女髪結は浮気うわきな亭主の跡を追って、夜逃よにげ同様にどこへか姿をかくしてしまったので、行きどころのないおたみはそのまま塚山さんの妾宅しょうたくに養われてその娘のようになってしまった。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
義理ぎりでもらった女房にょうぼうより、浮気うわきでかこったおんなより、しんからおもうのはおまえうえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それもあいつが浮気うわきもので、ちょいと色に迷ったばかり、おいやならよしなさい、よそを聞いてみますという、お手軽なところだと、おれも承知をしたかもしれんが、どうしておれが探ってみると
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私がただ一時的な浮気うわきで、そうしたことを言っているのだと解釈しているのだね。私は女に対して薄情なことのできる男じゃない。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しかし云ったときの浮気うわきな心にすぐ気がつくと急に兄にすまない恐ろしさに襲われた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浮気うわきな御行跡が私の目につく時もございますからね。そうした方であってはと将来が不安でならなくなるのでございましょう」
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
天下にたった一つで好いから、自分の心を奪い取るような偉いものか、美くしいものか、やさしいものか、を見出さなければならない。一口に云えば、もっと浮気うわきにならなければならない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「殿様は今お帰りになるではありませんか。どこのすみにはいっておいでになったのでしょう。あのお年になって浮気うわきはおやめにならない方ね」
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
僕は本来から気の移りやすくでき上った、きわめて安価な批評をすれば、生れついての浮気うわきものに過ぎない。僕の心は絶えず外に向って流れている。だから外部の刺戟しげきしだいでどうにでもなる。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一人でいろいろな忖度そんたくをして恨んでいるという態度がいやで、自分はついほかの人に浮気うわきな心が寄っていくのである。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
僕も叔父さんから注意されたように、だんだん浮気うわきになって行きます。めて下さい。月の差す二階の客は、神戸から遊びに来たとかで、僕のいやな東京語ばかり使って、折々詩吟などをやります。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうですよ。始終品行のことで教訓を受けますよ。親の言葉がなくても私は浮気うわきなことなどをする男でもないのに」
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「死に突き当らなくっちゃ、人間の浮気うわきはなかなかやまないものだ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
琴の上手じょうずな才女というのも浮気うわきの罪がありますね。私の話した女も、よく本心の見せられない点に欠陥があります。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
生える白髪しらが浮気うわきが染める、骨を斬られりゃ血が染める。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
源氏はなぜこう年がいっても浮気うわきがやめられないのであろうと不思議な気がして、恋の戯談を言いかけてみると、不似合いにも思わず相手になってきた。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「何を言うのだね。品行方正な人間でも言うように。これを浮気うわきと言ったら、君の恋愛生活は何なのだ」
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
京の中でも、浮気うわきな方とは申せ、極端な微行は経験しておいでにならないのであるが、簡単なお身なりをあそばして、大部分はお馬でおいでになることになっていた。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あまりにまじめ過ぎるからと陛下がよく困るようにおっしゃっていらっしゃいますのが、私にはおかしくてならないことがおりおりございます。こんな浮気うわきなお忍び姿を
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ただはかないこの世を捨ててしまいたいと願っている精神にも矛盾する身になっているではないかと自分でさえ恥ずかしく思われることである、いわんや世間の浮気うわき者のように
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
容貌ようぼうなどはとても悪い女でしたから、若い浮気うわきな心には、この人とだけで一生を暮らそうとは思わなかったのです。妻とは思っていましたが物足りなくて外に情人も持っていました。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
宮は浮気うわきな御性質なのであるから、愛してはおいでになっても、はなやかな新しい夫人のほうへお心が多く引かれることになるであろう、婚家もまた勢いをたのんでいる所であるから
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
などと、安っぽい浮気うわき男の口ぶりでものを言っていた。
源氏物語:03 空蝉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
浮気うわきな習慣は妻次第でなおっていくものです。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)