活人形いきにんぎょう)” の例文
探偵小説への情熱がめ切れず、泉鏡花の『活人形いきにんぎょう』から、江見水蔭の『女の顔切り』、小栗風葉の『黒装束』と、文芸作品の中から
そしてその活人形いきにんぎょうおどりを見ようとおもって、町の人はもとより、近在きんざいの人まで、うつくしくかざって、町のにぎやかな広場に集ってきました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
と鋭い目でじっと見られた時は、天窓あたまから、悚然ぞっとして、安本亀八かめはち作、小宮山良助あッと云うていにござりまする活人形いきにんぎょうへ、氷をあびせたようになりました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三芝居もどんなものだか、まつの若衆人形の落ちこぼれが、奥山おくやまあたりに出没しているとのことだが、それも気が進まない。活人形いきにんぎょうも見てしまった。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あれは真正ほんとうの巡査じゃありません。電気仕掛けの活人形いきにんぎょうです。そら、ラジオがかかった。躍りますよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お庄は活人形いきにんぎょうの並んだ見世物小屋の前にたたずんで、その目やまゆの動くさまを、不思議そうに見ていたが、うるさく客を呼んでいる木戸番の男の悪ごすいような目や
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
亀市の活人形いきにんぎょう。長崎のビードロ細工。火事と血だらけな絵巻をならべて、数珠じゅずを持った坊主頭が、しゃがれ声を張りあげているのは、いつも人立ちの多い地獄極楽の見世物。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その他羽子板はごいた押絵おしえ飴細工あめざいく、菊人形、活人形いきにんぎょう覗機関のぞきからくり声色使こわいろつかいの雑技あり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
行きついた場面では、すべての事のはこびが活人形いきにんぎょうを動かすようである。
牡丹燈籠ぼたんどうろうとかの活人形いきにんぎょうはその脇にあり。酒中花しゅちゅうか欠皿かけざらに開いて赤けれども買う人もなくて爺が煙管きせるしきりに煙を吐く。蓄音機今音羽屋おとわやの弁天小僧にして向いの壮士腕をまくって耶蘇教やそきょうを攻撃するあり。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一度はしゃちほこのような勇ましさで空を蹴って跳ねあがったかとおもうと、次にはかっぽれの活人形いきにんぎょうのような飄逸ひょういつな姿で踊りあがり、また三度目にはえびのように腰を曲げて、やおら見事な宙返りを打った。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
「そんなものじゃねえ、両国の小屋——近頃評判の地獄極楽の活人形いきにんぎょうの看板になっている普賢菩薩ふげんぼさつ様が、時々泣いているって話じゃありませんか」
ぐっと仰向いて、大きな目をじっみはった顔は、首だけ活人形いきにんぎょういだようで、綺麗きれいなよりは、ものすごい。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ターコール僧正そうじょうのおいのりで生きあがった人形……活人形いきにんぎょう……。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
御当所名題なだいの地獄極楽活人形いきにんぎょう、作人の儀は、江戸の名人雲龍斎うんりゅうさい又六、——八熱八寒地獄、十六別所べっしょ、小地獄、併せて百三十六地獄から、西方極楽浄土まで一と目に拝まれる
両国の活人形いきにんぎょうは大層な人気と聞いて、実は蔭乍ら喜んで居りましたが、あまりのなつかしさに、見ては反って悪いと思い乍ら、堪え兼ねて今日ちょいと覗いて見ますと、急に取り払われたそうで