洗濯物せんたくもの)” の例文
洗濯物せんたくものに気をとられてる細君の目には、雨あがりのうるおった庭のおもむきも、すいれんのうるわしい花もいっこう問題にはならない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
阿母さんはもう座敷の拭掃除ふきそうぢも台所の整理事しまひごとませて、三歳みつヽになる娘の子をせなひ乍ら、広い土間へ盥を入れて洗濯物せんたくものをしてる。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
ある夜のことに藤吉が参りまして、洗濯物せんたくものがあるならかかあに洗わせるから出せと申しますから、遠慮なく単衣ひとえ襦袢じゅばんを出しました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
って、ももをひろいげて、洗濯物せんたくものといっしょにたらいの中にれて、えっちら、おっちら、かかえておうちへかえりました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
其處からは赤い鹿の子絞りの扱帶しごきが、仕舞ひ忘れた洗濯物せんたくもののやうに、朝風にハタハタと動いて居るではありませんか。
その日の四時すぎ、自然の時間に、僕はベッドに腰かけてぼんやり窓の外をながめていたら、白衣に着かえたマア坊が、洗濯物せんたくものを持ってひょいと庭に出て来た。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あしもとには、ちいさな家屋かおくがたてこんで、物干ものほしの洗濯物せんたくものが、夏空なつぞらしたで、かぜにひるがえり、すこしばかりので、子供こどもが、おにごっこをしてあそんでいました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
お松は今、乾いた洗濯物せんたくものをおろして、畳付たたみつけていたのである。磋磯之介さきのすけの肌着と、小袖、そしてはかまだった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裏口の生垣いけがきいているこでまりの白い花のあわが、洗濯物せんたくもののように、風に吹かれていた。千穂子は走って、台所へ行き、釜の下をのぞいた。火が燃えきっていた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
十一月×日 俺は今日洗濯物せんたくものを俺自身洗濯屋へ持って行った。もっとも出入りの洗濯屋ではない。東安市場とうあんしじょうの側の洗濯屋である。これだけは今後も実行しなければならぬ。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ほかの者は、大女が洗濯物せんたくものを繩に干してゐるのを見て、腰をぬかさんばかりに驚いて、走つて自分の家に帰つたが、一週間ばかりは起きることができなかつたとも言ひます。
虹猫の大女退治 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
押入れをあけると洗濯物せんたくものの山。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
洗濯物せんたくものと一緒に、階子段の下に突つ込んで置きました」
洗濯物せんたくものは何處にあるんだ」