泉石せんせき)” の例文
どこかであぶらの濃い魚を夕餉ゆうげに焼いているとみえる。庭園の疎林そりん泉石せんせきは閑雅だが、立ち迷うけむりは、ひどく実生活を思わせる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五二壇場だんぢやうの御前なる三の松こそ此の物の落ちとどまりしところなりと聞く。すべて此の山の草木泉石せんせきれいならざるはあらずとなん。
それから、京極の宿所の釣殿つりどのや、鹿ヶ谷の山荘の泉石せんせきのたたずまいなどが、髣髴ほうふつとして思い出される。都会生活に対するあこがれが心をただらせる。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
土地の橐駝師うゑきやが昔の名匠の苦心を雜草の中に學ばうとして、新らしい草鞋わらぢを朝露にじと/\させながら、埋れた泉石せんせきを探り歩いてゐることもあつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
はなった障子しょうじ隙間すきまからはおにわもよくえましたが、それがまた手数てかずんだたいそう立派りっぱ庭園ていえんで、樹草じゅそう泉石せんせきのえもわれぬ配合はいごうは、とても筆紙ひっしにつくせませぬ。
母屋おもやほかに土蔵七むね、それをつなぐ廊下、泉石せんせきの奇を尽し、さして広くはありませんが、善美を尽した豪勢な構えは、見ぬ世の龍宮と言ってもこれほどではなかったでしょう。
泉石せんせきのここだあかるき真日照まひでりに青鷺がてりく鴨のあひだ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
泉石せんせきに魂入りし時雨かな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そこは裏庭らしく、築山の後をめぐっていて行く。かなり大身の屋敷とみえ、母屋おもやは幾棟にもわかれ、建築の宏壮、泉石せんせきの清楚、日吉は足をすくめた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空しかり縁に眼をやる泉石せんせきつね水たたへ濡れてありしを
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そこはうしろに伊吹連峰をのぞみ、前に大湖の春と四明ヶ嶽を見はらし、庭園の泉石せんせきには花木珍石を配し、どこと一点のいうところもない殿造りだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にほひをさなき泉石せんせき
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すると、泉石せんせき見事な庭苑ていえんの彼方で、すらと、鶴のような姿の人が立ってこなたを振向いた。髪に紫紐金鳳しじゅうきんぽう兜巾ときんをむすび、すそ長い素絹そけんの衣をちゃくし、どこか高士こうしの風がある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)