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此袖
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このそで
我れは
知らねど
胸にや
刻まれし
學士が
言ひし
詞一
言半句も
忘れず、
歸り
際は
此袖をかく
捉らへて
待つとし
聞かば
今かへり
來んと
笑ひながらに
仰せられし
被のお
聲も
最う
聞くことは
出來ず
申さば
其お
心が
恨みなり
父樣が
惡計それお
責め
遊ばすにお
答への
詞もなけれど
其くやしさも
悲しさもお
前さまに
劣ることかは
人知らぬ
夜の
家具の
襟何故にぬるゝものぞ
涙に
色のもしあらば
此袖ひとつにお
疑ひは
晴れやうもの
一つ
穴の
獸とは
餘りの
仰せつもりても
御覽ぜよ
繋がれねど
身は