すで)” の例文
既にすでに多くの科学者や思想家が申し出たように、女性は産児と哺育ほいくとの負担からして、実生活の活動を男性に依託せねばならなかった。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
で、貴方の悔悟かいごされたのは善い、これは人として悔悟せんけりやならん事。けれども残念ながら今日こんにちに及んでの悔悟はすでおそい。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かの最も日本の友国たるところの対岸の「カリホルニャ」に於ては、今日こんにち既にすでに日本人排斥が起っておるのである。
〔憲政本党〕総理退任の辞 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
然るに今日島崎氏の詩をしりぞけて既にすでに陳腐の域に墜ちたものだといふ説がある、果してその言の如くであらうか。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
他の一般文明国においては、普通選挙制を採用すべきや否やは、すでに過去の問題にして、今日の政論には上らない。
すなわちあの時はただ愛、ただ感ありしのみ、他に思考するところの者をり来たりて感興を助くるに及ばざりしなり。されどかの時はすでにすでに過ぎきたり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
同時に、今更の如くわたしの身も正に彼の古いステーシヨンと同じやうに今は全く過去のものとなつた——わが時代は既にすでに遠く過ぎ去つたといふ事を意識しないわけには行かない。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
人あるいはかかる事業はよろしくこれを私人の慈善事業にすべしと主張するかもしれぬが、私はこのたいせつな事業を私人の慈善事業に一任せしことすですでに久しきに失したと考える
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
しかしながら政界の腐敗も、今日はもはやその極度に達したと思う。およそ物は極度に達すれば必ず反動が来るものである。しかしてその暗流はすでにすでに動いているのである。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
かかる事業はよろしくこれを私人の慈善事業にすべしと主張するかもしれないが、私は、このたいせつな事業を私人の慈善事業に一任せしこと、すですでに長きに失したと考える者である。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
そして今日という暗澹あんたんたる此方こなたの境から花やかな昨日という彼方かなたの境を打眺めて見ると、わが生涯というものは今や全く過去に属してすですでにその終局を告げてしまったものとしか思われない。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
予備門よびもんに入学して一年いちねんばかりぎての事であるが、山田やまだの第二中学にる時分から早くすで那様こんな了見りやうけんが有つたらしいのです、一年いちねんぜん其志そのこゝろざしいだいたわたしだ小説のふでつて見なかつたのであるが
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
如何なんとなれば、今日は既にすでによほど活動を要する時機である。活動は青年にある。
〔憲政本党〕総理退任の辞 (新字新仮名) / 大隈重信(著)