“林(りん)” の例文
そこへお見舞に行った祖母は、私へのおみやげというので、お菓子や果物を沢山いただいて来て、「林(りん)と同じに、孫のように思われる」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「なに、林(りん)師範だって。そいつあ、えらいもンに見物されたな。ごあいさつせずばなるまい。おい、誰か行って、丁重(ていちょう)にお呼びしてこい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
林(りん)も御用大事と心得ている人物であるので、外出する時には必ず重要書類を懐中して出て、途中でも二、三度ぐらいは検(あらた)めることにしていた。
林(はやし)のおやじ……? ウン。あの若い朝鮮人……林(りん)の親父(おやじ)だよ。まだ話さなかったっけな……アハハハ。少々酔ったと見えて話が先走ったわい。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なんかと安物を賣りつけるのから、横濱の林(りん)といふ大きな呉服やは、立派なものを置いてゆくのだつた。
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
見上ぐれば、蝦夷松椴松峯(みね)へ峰(みね)へと弥(いや)が上に立ち重なって、日の目も漏(も)れぬ。此辺はもう関(せき)牧場(ぼくじょう)の西端になっていて、林(りん)は直ちに針葉樹の大官林につゞいて居るそうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
即ち林(りん)祭酒述斎を始として、柴野栗山、古賀精里等の諸博士である。その二洲でないことは明である。二洲の家にあるものが、ことさらに二洲を訪ふべきでは無いからである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
朝鮮人を凡(すべ)て高麗人と呼ぶのは昔からのならわしである。今も半数は鮮姓を承ぎ、沈(ちん)、崔(さい)、鄭(てい)、朴(ぼく)、金(きん)、林(りん)、何(か)、卞(べん)等昔のままである。明治までは特殊な部落であって雑婚を堅く封じられた。
苗代川の黒物 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
煙吐く煙突林(りん)の大傾斜(おほなだり)我が驚くと見やる間も無し
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
何を隠そうあの林(りん)という青年は朝鮮人じゃないんだ。林友吉(はやしともきち)という爆弾漁業者(ドン)の一人息子で、友太郎という立派な日本人だ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おっ、やっぱりそうだった。林(りん)師範さま、李小二(りしょうじ)でございますよ。……いったいまあ、どうしたわけで、こんなところへ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なぜ早く聞かせなかった。何とか穏(おだや)かな方法もあったろうに、何しろ林(りん)はまだ若いから」といわれました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
……彼(か)の林(りん)青年……友吉の忰の友太郎が今年の盂蘭盆(うらぼん)の十二日の晩に、ヒョッコリと帰って来たのには胆(きも)を潰したよ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
小さな火燵(こたつ)に寄りかかって、笑いながら、「こうやって林(りん)が立派にやっていられるので、私たちも仕合せなのを喜んでいますが、孫にだって御主人といってもよかろうねえ」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
さては、林(りん)師範へ何か危害がかかったところを、逆に師範のため、都の刺客も管営(かんえい)も差撥(さはつ)も刺し殺されたにちがいない。日ごろから悪評しきりな管営や差撥だった。命を落したのもいわば天罰……。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)