木靴きぐつ)” の例文
「ここへおいでよ、おいで。おまえに木靴きぐつをぶっつけられると、どんな思いをしたものか、ひとつおまえにも知らせてあげるから!」
コスモはなんのかざりもない色のあせたくろふくをつけ、まんなかにすりきれたふさのついてる大黒帽だいこくぼうをかぶり、木靴きぐつをはいていました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そうして、胸をおさえると彼の姿は夜霧の中に消えていった。しかし、間もなく、彼の足音に代って石を打つ木靴きぐつの音が聞えて来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「すずの手のついた、料理道具があるんでさ」こう言いながら、古い木靴きぐつを取り出して、カラスをそのまんなかに入れました。
水は木靴きぐつにいっぱいになり、いかにむちで打たれても両顎りょうあごの震えは止まらず、絶えず首筋は鎖につなぎ止められ、足は絶えずたれ下がっているだろう。
そのチャンチャン坊主の支那兵たちは、木綿もめん綿入わたいれの満洲服に、支那風の木靴きぐつき、赤い珊瑚さんご玉のついた帽子をかぶり、辮髪べんぱつの豚尾を背中に長くたらしていた。
それに例外なく木靴きぐつというものを穿いていた。木靴については後で語ろう。
ニールスはガチョウのせなかにまたがって、足をぶらぶらやっているうちに、かたっぽうの木靴きぐつがぬげてしまったのです。
「古い木靴きぐつだな。おまけに、上のほうが取れちゃってるじゃないか! それも、お姫さまにあげるってのかい?」
時々彼女は目をさましかかってるように大きなため息をもらしては、ほとんど痙攣的けいれんてきに人形を腕に抱きしめた。寝床のそばにはただ片方の木靴きぐつがあった。
かわズボンに木靴きぐつといった、労働者ろうどうしゃのようなかっこうです。おばあさんは、すぐに小人こびとだなと気がつきましたので、すこしもこわくはありませんでした。
それからまた、綿ビロードの大きなズボンをはき、足には木靴きぐつをつっかけ、シャツも着ず、首筋を出し、刺青いれずみした両腕を出し、顔はまっ黒に塗られていた。
お百姓さんは、すぐさま、そばへやってきて、木靴きぐつで氷をくだいて、家のおかみさんのところへ持って帰りました。こうして、アヒルの子は生きかえりました。
が、翌朝よくあさはやく、一人ひとり百姓ひゃくしょうがそこをとおりかかって、このことつけたのでした。かれ穿いていた木靴きぐつこおりり、子家鴨こあひるれて、つまのところにかえってました。
鞣革なめしがわの帽子をかぶり、灰色の粗末なラシャのズボンと背広とをつけ、その背広には赤いリボンの古く黄色くなってるのが縫いつけてあり、木靴きぐつをはき、日に焼け
付近の小路には、呼びかわす人々の声や見物に駆けつけてゆく野菜作りの木靴きぐつの音などが聞えた。
露のいっぱいおりたくさむらの中を歩き、物悲しい一種の夢遊病の状態に陥りながら自ら言った、「こんな時分に庭を歩くにはほんとに木靴きぐつがいる。風邪かぜをひくかもしれないから。」
あんな見すぼらしい着物をつけながら、平気で大きい貨幣をポケットから引き出し、木靴きぐつをはいた小婢こおんなに大きな人形をおごってやるその男は、確かに素敵なまた恐ろしいじいさんに違いなかった。
上に述べた背広と木靴きぐつの男は一八一七年ごろには、それらの地面のうちの最も狭くそれらの家のうちの最も粗末なものに住んでいた。彼はそこにひとりで寂しく黙々として貧しく暮らしていた。