書生しょせい)” の例文
そのころぎゅうなべをつつくのは、ひんのわるいものがやることで、いれずみをしたまちのごろつきと、適塾てきじゅく書生しょせいとにかぎられていました。
昔、支那シナある田舎に書生しょせいが一人住んでいました。何しろ支那のことですから、桃の花の咲いた窓の下に本ばかり読んでいたのでしょう。
女仙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
余は一個の浮浪ふろう書生しょせい、筆一本あれば、住居は天幕てんまくでもむ自由の身である。それでさえねぐらはなれた小鳥の悲哀かなしみは、其時ヒシと身にみた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新しい家の生活を記して女中のほかに書生しょせいがいるとか、看護婦がいるとか、患者が相当にあって暮し向きが豊かであるとか
かあいいおじょうちゃんは、今まで空家あきやだったその家に住みこみました。もちろん、お母さんや書生しょせいさんもいっしょです。
赤とんぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それは見覚えのある坂の下のおやしきにいる書生しょせいさんであったが、たしかにどのお邸の書生さんと云うことは浮ばなかった。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たけしくんや、きみ子ちゃんは、とっくにねてしまいましたが、おかあさんが、書生しょせいといっしょに出むかえて、心配そうに、木村さんにたずねました。
ふしぎな人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今、仏蘭西フランス巴里パリから着いたものである。朝の散歩に、主人逸作いっさくといつものように出掛でかけようとして居るところへ裏口から受け取った書生しょせいが、かの女の手に渡した。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何んでも人力車じんりきしゃ書生しょせいをつけてよこして、花嫁御寮ごりょうを乗せて、さっさとれて行ったりしては、お袋さんも娘の出世はよろこんでも、愚痴の一つもいいたくなって
書生しょせいに、「先生、もうよほど待たせてありますから」と催促せられて、やっと立上るのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
彼女あれは今まで自己おのれ価値ねうちを知らなかったのである、しかしあの一条からどうして自分おれのような一介の書生しょせいを思わないようになっただろう……自分おれには何もかもよくわかっている。』
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
青年の、しかも書生しょせいが、とおっしゃるのでしょう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五月雨の相合傘は書生しょせいなり
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
道修町どしょうまちのくすりにくまがとどいて、そのくすり主人しゅじんが、適塾てきじゅく書生しょせいさんに、かいぼうをしてみせてもらいたいと、たのんできました。
淡谷庄二郎しょうじろうさんは、ひとりの書生しょせいをつれて、自動車で、まるうち三菱みつびし銀行の金庫から、ふろしきにつつんだ、小さいはこを取り出して、おうちへ帰りました。
塔上の奇術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
書生しょせいさんは、頭をかきながら歩き出しましたが、朝顔の葉にとまって、ふたりの話をきいてる赤とんぼを見つけると、右手を大きくグルーッと一回まわしました。
赤とんぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「傷もないそうですから、卒中そっちゅうかなんかじゃないでしょうか、書生しょせいさんも見ていらっしゃいよ」
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし、ほかにも書生しょせいがいることだし、おまえ一人ひとりにえこひいきするようにみられては、おたがいによくない。
そのとき、おじょうちゃんのお母さんと、赤とんぼにいたずらをした書生しょせいさんが、出てまいりました。
赤とんぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
書生しょせいもふたりいるほかに、わたしが社長をしている会社の若い社員に、三人ほどとまりにきてもらっているので、美術室のまわりはむろん、やしきのまわりにも、ぐるっと
奇面城の秘密 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夫人の家にはその二人の邪魔になるもののいないことは夫人から聞いていたが、書生しょせいじょちゅう多勢おおぜいいるので都合を聞いたうえでないとすぐには往けなかった。章一は省線の踏切の手前で車をおりた。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それから花崎さんは、マユミさんと俊一君の手をひきながら、家のほうへ、みんなを案内しましたが、日本座敷の縁がわに近づいたとき、中から書生しょせいさんがとび出してきました。
妖人ゴング (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
明智の方は住宅兼用の書生しょせい流儀であったのに反して、宗像博士は、家庭生活と仕事とをハッキリ区別して、郊外の住宅から毎日研究室へ通い、博士夫人などは一度も研究室へ顔出しをしたことがなく
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ベルをおすと、書生しょせいがドアを開きました。
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)