旅芸人たびげいにん)” の例文
このとき、盲目もうもく母親ははおやきながら、十五、六のむすめが、雪道ゆきみちあるいていきました。母親ははおや三味線しゃみせんかかえていました。旅芸人たびげいにんです。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれはどこかの町で見かけた旅芸人たびげいにん所作しょさを思いうかべて、わざと、きょうをそえながら、つえでクルリと円形えんけいせんをえがいて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにしても、子どもたちの話では、おまえはまた旅芸人たびげいにんになると言っているそうだが、おまえもう、あの寒さと空腹くうふくで死にかけたことをわすれたのかえ
つひに斃れし旅芸人たびげいにんのかつぽれが臨終りんじゆう道化姿どうけすがたぞ目に浮ぶ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とおざかった時分じぶん、こんどは、ドンコ、ドンコと、たいこをたたいて、まちなかを、旅芸人たびげいにんをのせた、人力車じんりきしゃが、れつをつくって、顔見世かおみせに、まわりました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
閣下はたして、右の権力より発動しまするところのご命令めいれいをもって、われわれごときあわれむべき旅芸人たびげいにん
そうかと思うと、鮨売すしうりの声やもろこし団子だんご味噌田楽みそでんがくい物屋、悠長ゆうちょう尺八しゃくはちをながしてあるく虚無僧こむそうがあるかと思えば、ひなびた楽器がっきをかき鳴らしてゆく旅芸人たびげいにんかさのむれ——。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかでも、いちばんこころをひかれたのは、もう、七、八ねんまえになるが、五、六にんれの旅芸人たびげいにんが、あるいそいでここのみなとから、ふねって出立しゅったつしたときのことであります。
海と少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)