新田にった)” の例文
「そこで君から一つ、新田にったさんへ紹介してやって貰いたいんだが——新田さんと云うんだろう。あの物質主義者マテリアリストの医学士は?」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今はタンマチと訓む由であるも、反町大膳そりまちだいぜんの在所たる上野こうずけ新田にった郡の反町を始め、諸国にある者の多くはソリマチと訓んでいる。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
佐沼は仙台よりはまだずっと奥で、今の青森線の新田にった駅或はせみね駅あたりから東へ入ったところであり、海岸へ出て気仙けせんの方へ行く路にあたる。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
為世の世を去る年には、その新田にった義貞も藤島に討死し、北畠顕家きたばたけあきいえ石津いしづに戦死して、足利あしかが尊氏が将軍となった。翌延元四年には後醍醐天皇が吉野で崩御になった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
新田にった先生も、一しょだった。つまり新田先生が、小学校をおやめになって、大阪へ行かれるのを、成田町まで千二が送って来て、そうしてその別れの記念にとった写真であった。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
建武けんむの年の新田にった足利あしかがの合戦をはじめ、岡崎の要害として、ここはいくたびか古戦場となって来たし、今も——つい数年前には、織田信秀おだのぶひでと、松平家の軍とが、大戦の血をながし
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくし地上ちじょうったころ朝廷ちょうていみなみきたとのふたつにわかれ、一ぽうには新田にった楠木くすのきなどがひかえ、他方たほうには足利あしかがその東国とうごく武士ぶしどもがしたがい、ほとんど連日れんじつ戦闘たたかいのないとてもない有様ありさまでした……。
すなわち新田にったの残党や、又、北畠きたばたけの残党や、楠氏なんしの残党その者達である。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そいつは矢口の新田にった神社の近所にいる八蔵という奴だそうです
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
矢口村、新田にった神社。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
昨日きのう新田にったから返事が来たが、月水金の内でさえあれば、いつでも喜んで御案内すると云うんだ。だからその内で都合つごうい日に参観して来給え。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「この悪例は、新田にっためがひらいたものだ。新田の帰国もゆるすではなかった」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新田にった義興よしおきの主従を川へ沈めたというのは本当なんでしょうね
新田にったはまず三人の客を病院の応接室へ案内した。そこはこの種の建物には珍しく、窓掛、絨氈じゅうたん、ピアノ、油絵などで、甚しい不調和もなく装飾されていた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
高氏拘禁の役目をおびてきたその武士どもは、鎌倉派遣のものではなく、足利ノ庄とは、つい隣国の、新田にった小太郎義貞の家来を主とし、それに宇都宮、結城などの兵を交じえた一隊だった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)