“斥(さ)” の例文
その名を斥(さ)さんは憚あれど、同郷人の中に事を好む人ありて、余が屡〻芝居に出入して、女優と交るといふことを、官長の許に報じつ。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
謝名城(ジナグスク)(大宜味(オホギミ)村)の海神祭(ウンジヤミ)のおもろには「ねらやじゆ〔潮〕満(サ)すい、みなと〔湊〕じゆ満(ミチ)ゆい……」とあつて、沖あひの事を斥(さ)すらしい。
琉球の宗教 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
抑〻(そも/\)わが見し洞窟はいかなる處なりしぞ。舟人の物語に、この石門の奧に光りかゞやくところありといひしは、わが漂(たゞよ)ひ着きし別天地を斥(さ)して言へるにはあらざるか。
他の二つの場合(前に陳(の)べたるものを斥(さ)す)も今憶(おも)ひ出だし候てだに心跳(をど)りせらるゝ一種の光明、慰藉(ゐしや)に候へども、先日御話いたしし実験は、最も神秘的にして亦(また)最も明瞭に
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
頭に這入る事を斥(さ)すにも、這入らない事を斥すにも
その名を斥(さ)さんは憚(はゞかり)あれど、同郷人の中に事を好む人ありて、余が屡〻(しば/\)芝居に出入して、女優と交るといふことを、官長の許(もと)に報じつ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
故山と言うのは、浄土を斥(さ)しているものと思えるが、尚意の重複するものが示されて、慧心院の故郷、二上山の麓(ふもと)を言うていることにもなりそうだ。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
ヘスペリアは希臘(ギリシア)語、晩國、西國の義なり。或は伊太利を斥(さ)して言ひ、或は西班牙(スパニア)を斥して言ふ。されどこゝには、希臘神話にヘスペリアといふ女神ありて、西方の林檎園を守れるを謂ふならん。
神達に殺して供える生物を、何とも斥(さ)して
ましてや貴人は今は世に亡き御方(おんかた)である。あからさまにその人を斥(さ)さずに、ほぼその事を記(しる)すのは、あるいは妨(さまたげ)がなかろうか。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
みち・ひな(山本信哉氏などは、あがたをも、同類に考へてゐる)と言ふ語(ことば)は、元はよそ国・他国(ヒトクニ)位の積りが、遠隔の地方を斥(さ)す様になつたとも考へられる。
万葉びとの生活 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
若者の名は斥(さ)して言うまでも
砂糖屋でいた頃も、八百屋(やおや)、肴屋(さかなや)にお前と呼ぶことを遠慮したが、当時はまだその辞(ことば)を紆曲(うきょく)にして直(ただち)に相手を斥(さ)して呼ぶことを避けていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
万葉びとと呼ぶのは、此間に、此国土の上に現れて、様々な生活を遂げた人の総べてを斥(さ)す。啻(ただ)に万葉集の作者として、名を廿巻のどこかに止めて居る人に限るのではない。
万葉びとの生活 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
経籍訪古志に「酌源堂亦蔵此本、紙墨頗精」と云つてあるのが即後者で、榛軒の詩中に斥(さ)す所である。今其所在を知らない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
錦里先生は茶山を斥(さ)し、蘇門の高士は栗陰(りついん)を斥したのである。服は服部だとして、服部栗陰の何人なるかは未だ考へない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
アイルランドとスコットランドとから起つて、ヨオロッパ一般に行はれるやうになつた dûn(ドユウン) といふ語(ことば)は、かういふ処を斥(さ)して言ふのである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その名を斥(さ)さんは憚(はばか)りあれど、同郷人の中に事を好む人ありて、余がしばしば芝居に出入りして、女優と交わるということを、官長のもとに報じつ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
父忠兵衛も牧も、少女の意の斥(さ)す所を暁(さと)っていたが、父は憚(はばか)って肯(あえ)て制せず、牧は懾(おそ)れて咎めることが出来なかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
第八市野迷庵、第九余語古庵は斥(さ)す所が明白である。第十服都某は葌斎集の栗陰(りついん)か。第十一松崎某は茶山が其詩を賞してゐる。恐くは慊堂(かうだう)であらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
自分が何の悪い事もしていぬのに、余所(よそ)から迫害を受けなくてはならぬようになる。それを苦痛として感ずる。悔やしいとはこの苦痛を斥(さ)すのである。
雁 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これは此手紙の中の難句で、句讀(くとう)次第でどうにも讀み得られるが、わたくしは水府もの下で切つて、丸燒は前年七月の眞志屋の丸燒を斥(さ)すものとしたい。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかし所謂(いわゆる)危険なる洋書とはそんな物を斥(さ)して言っているのではない。
沈黙の塔 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
疇昔(ちゅうせき)の日わたくしは鹿嶋屋清兵衛(かじまやせいべえ)さんの逸事に本づいて、「百物語」を著(あらわ)した。文中わたくしの鹿嶋屋を斥(さ)す詞(ことば)に、やや論讃に類するものがあった時、一の批評家がわたくしの「僭越」を責めた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
太守様と云ったのは、当主土佐守豊範を斥(さ)したのである。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)