支離滅裂しりめつれつ)” の例文
ちょうど、ありの群れに、熱湯をそそいだように、峰、山道、低地のくぼ、あらゆる所に、方向のない武者の影が、支離滅裂しりめつれつに逃げみだれた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎしこゝろはづかしや、まよひたりお姿すがたいままほしゝとがれば、モシとひかへらるゝたもとさきれぞオヽ松野まつのなんとして此所こゝへは何時いつにとことば有哉無哉うやむや支離滅裂しりめつれつ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「何がいいんだか、国語は支離滅裂しりめつれつ、思想は新しいかもしれないが、わけのわからない文句ばかり集めて、それで歌になってるつもりなんだから、明星派の人たちには閉口するよ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
双方に気合きあいがないから、もう画としては、支離滅裂しりめつれつである。雑木林ぞうきばやしの入口で男は一度振り返った。女はあとをも見ぬ。すらすらと、こちらへ歩行あるいてくる。やがて余の真正面ましょうめんまで来て
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……乗物をみると、支離滅裂しりめつれつにたたっこわしてある。人間わざでないようなこわし方だ。つまり、どうでも、神隠しと見せたいのだ。……ところで、腑に落ちないのが、大井の態度。
しかも論旨は支離滅裂しりめつれつなのさ。もうまるで意味が分らないんだ。……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
賊軍は、無数の死骸をすてて八方へ逃げちるやら、または一団となって、降伏して出る者など、支離滅裂しりめつれつになった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまは見栄みえもなく敗走していた池田方の士卒は、志段味しだみ篠木しのき柏井かしわい——と支離滅裂しりめつれつになって、遁走とんそうしたが、矢田川やだがわを越え得たものは、みな助かった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したがって、吉水さえたおしてしまえば、後は、岡崎の善信だろうが、何だろうが、みな支離滅裂しりめつれつとなって、社会へ何の力も持たなくなるのは知れきっている
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、おどろいて退くと、後からは張苞ちょうほうの軍隊がときをあげてきた。崔諒の全軍は支離滅裂しりめつれつになり、彼はわずかの部下とともに、小路こうじ迂回うかいして、安定の城へ引っ返した。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここを、追い撃ちすれば、上方勢は、支離滅裂しりめつれつとなり、お味方の大勝はうたがいもありません」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、佐々兵が狼狽しながら、二弾、三弾を銃につめかえている間には、はや利家たちの鉄騎隊は、かれらの中を駈けめぐって、その布陣を支離滅裂しりめつれつなものにしていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
理論は支離滅裂しりめつれつになり、果ては、涙をにじませ、いたずらに、拳をにぎってしまうのである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一陣破れ、二陣ついえ、中軍は四走し、まったく支離滅裂しりめつれつにふみにじられてしまったが、ここに不可思議な一備えが、後詰にあって、林のごとく、動かず騒がず、しんとしていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「また、お手軽にゃ分るめえぜ。甲州でドジを踏んでから、仲間の連絡も支離滅裂しりめつれつだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔良がんりょうが討たれたので、顔良の司令下にあった軍隊は支離滅裂しりめつれつ潰走かいそうをつづけた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、かえってそれが、敵の虚をついて、用心ぶかい敵の伏兵陣を支離滅裂しりめつれつに踏みやぶったのである。駈け込む時は、てんやわんやであったが、渓流に沿って南下する方角は一致していた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その他、飯尾いいお、加藤、下方しもかたなどの織田軍は、聯絡を失って、支離滅裂しりめつれつした。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)