掃蕩そうとう)” の例文
かるが故に、新たなる啓示が出現した時には、もって、ふるい啓示の上に築き上げられた迷信の大部分を掃蕩そうとうするの必要に迫られる。
よく考えると何にもないのに、通俗では森羅万象しんらばんしょういろいろなものが掃蕩そうとうしても掃蕩しきれぬほど雑然として宇宙に充牣じゅうじんしている。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鰥寡孤独かんかこどくは常の年には仲間によって支持せられるが、何か異常の大事変があると、まず是らの抵抗力の弱い者から掃蕩そうとうせられるのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
両者は共にある程度まで、権利の簒奪さんだつを代表している。そしてあらゆる簒奪を掃蕩そうとうせんがためには、彼らをも打ち倒さなければならない。
尊氏の博多入りは、歩武ほぶ堂々な入市ではない。途々、降参人を入れ、掃蕩そうとうの余勢を駆ッて、いつかちまたに乱入していたのである。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清廉せいれん、誘惑をしりぞけ圧迫を物ともせず、ギャング掃蕩そうとうのためには身命さえも賭そうという、次期州知事の候補者の一人だ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ローマはもはや野蛮人らを国境外に掃蕩そうとうする力がなくて、彼らを自分のうちに合体させ、そして間もなく彼らは最上の番犬となってしまったのである。
やがては掃蕩そうとうしたりしが
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
オーアンの高地から掃蕩そうとうされたマルコンネ、パプロットから駆逐されたデュリュット、退却するドンズローとキオー、半側面より攻撃されたロボー
十二月に入ると、摂津せっつ方面の戦況は、急転きゅうてん直下を示した。いうまでもなく織田軍の優勢が、荒木一類をことごと掃蕩そうとうし終ったのである。まだ、伊丹をささえていた頃
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また普通の俗人は日常の雑事をとらえて実在に触れていると考えておりますが、これらの煩瑣はんさな事件を掃蕩そうとうしてしまうと、ますます人間に近くなるものであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大砲だ! こういう奴らを掃蕩そうとうしてくれ!……君らはいったい、戦いとはいかなるものであるか
軍隊は沸き立った各街路に突進し、あるいは用心して徐々に進み、あるいは一挙に襲撃しながら、右に左に、大なるものは掃蕩そうとうし、小なるものは探査した。
教育の精神は単に学問を授けるばかりではない、高尚こうしょうな、正直な、武士的な元気を鼓吹こすいすると同時に、野卑やひな、軽躁けいそうな、暴慢ぼうまんな悪風を掃蕩そうとうするにあると思います。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
野口城を陥し、端谷城をり、順次、神吉の神吉長則かんきながのりや、志方の櫛橋治家などの塁も衝き、別所一族の領土とする広汎こうはんな地域にわたって、放火、掃蕩そうとう、迫撃の手を強めていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全体より見れば汚水の掃蕩そうとうは下水道が文明に尽す務めであるから、そしてこの見地よりすれば
またこの不同不二ふどうふじ乾坤けんこん建立こんりゅうし得るの点において、我利私慾がりしよく覊絆きはん掃蕩そうとうするの点において、——千金せんきんの子よりも、万乗ばんじょうの君よりも、あらゆる俗界の寵児ちょうじよりも幸福である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
岐阜ぎふ城まで、早馬をとばせば、日数とても幾らもかかるまい。高岡へ攻めかかるにしても、南伊勢へ進路をとるにしても、この附近の敵を掃蕩そうとうするには、なお幾日かはかかる。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とまれ彼は、残敵を掃蕩そうとうしながら、その日の午後にはもう博多の内へ入っていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敗亡者らがあるいはそこに逃げ込んではすまいかという懸念があったので、ブュジョー将軍が公然のパリーを掃蕩そうとうしている間に、ジスケ警視総監は隠密のパリーを探索することになったのである。
けれど貴軍の力で、賊を掃蕩そうとうしてくれれば、もはや私という番人を失っても、村の老幼は、田畠へ帰ってくわを持てましょう。思いのこすことはありません、将軍、どうか首を刎ねて下さい
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悲惨の掃蕩そうとうは、単に地面を高めることによってなされるであろう。
「最期まで、よくお働きあそばして、自身、奥の丸に火をけ、御自害なさいましたが……そこへ躍りこんで来た木下勢が、忽ち、火を消し止めて、あくまで静かに、城中を掃蕩そうとうし尽しました」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)