括枕くゝりまくら)” の例文
きよにいひけて膳立ぜんだてをさせて、それを小六ころくすゝめさしたまゝ自分じぶん矢張やはとこはなれずにゐた。さうして、平生へいぜいをつとのするやはらかい括枕くゝりまくらつてもらつて、かたいのとへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
立てつけのひどく惡い雨戸の隙間を洩るゝ月の光を面に浴びて白い括枕くゝりまくらの上に髮こそ亂して居れ睫毛まつげ一本も動かさない寢像のいゝ千登世の顏は、さながら病む人のやうに蒼白かつた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
明日あしたも御めだ」とこたへて、自分のへや這入はいつた。そこにはとこがもういてあつた。代助は先刻さつきせんいた香水を取つて、括枕くゝりまくらうへ一滴いつてきらした。それでは何だか物足ものたりなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ蒲團ふとんけて二三かる御米およね搖振ゆすぶつた。御米およねかみ括枕くゝりまくらうへで、なみやううごいたが、御米およね依然いぜんとしてすう/\てゐた。宗助そうすけ御米およねいて、ちやから臺所だいどころた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)