所化しょけ)” の例文
ギョッとした正介がこわごわ所化しょけの後から従いていき、本堂を覗いてみると、紛れもなく重信はいま落款を書きおわり
浄光寺じょうこうじと申す山内さんない末院まついん所化しょけにて、これも愚僧などゝ同様、折々悪所場あくしょば出入でいり致し候得念とくねんと申す坊主にて有之候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ここにある。」袂を探って、彦兵衛の拾った小さい金物を手の平へ載せると、そのまま所化しょけの前へ突き出して
すると寺の本堂に、意外にも左近と平太郎との俗名を記した位牌いはいがあった。喜三郎は仏事が終ってから、何気なにげない風をよそおって、所化しょけにその位牌の由縁ゆかりを尋ねた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
所化しょけ五六人より多くなれば、魔縁をひくだろう、ことごとしいといって止めてしまったということである。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
寺のやっこが、三四人先に立って、僧綱そうごうが五六人、其に、大勢の所化しょけたちのとりいた一群れが、廬へ来た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そこに住む出家、比丘尼びくに、だいこく、所化しょけ、男色の美少年、その他青侍あおざむらいにいたるまで、田畑を耕すこともなくて上白じょうはくの飯を食い、糸を採りはたを織ることもなくてよい衣裳いしょうを着る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
脚絆穿きゃはんばきで、むかし傀儡師かいらいしと云った、被蓋きせぶたの箱をくびに掛けて、胸へ着けた、扮装いでたち仔細しさいらしいが、山の手の台所でも、よく見掛ける、所化しょけか、勧行か、まやかしか、風体ふうてい怪しげなる鉢坊主。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大和尚が居室いま、茶室、学徒所化しょけの居るべきところ、庫裡くり、浴室、玄関まで、あるは荘厳を尽しあるは堅固をきわめ、あるは清らかにあるはびておのおのそのよろしきにかない、結構少しも申し分なし。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夕食の膳が出ると、築麻市左衛門は、所化しょけの僧に酒を所望した。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
更衣印籠いんろう買ひに所化しょけ二人
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
遂に夜な/\恐しき夢に襲はれ候やうに相なり候間、せめて罪滅つみほろぼしにと、慶蔵の墓のみならず、往年溜池ためいけにて絞殺しめころし候浄光寺の所化しょけ得念とくねんが墓をも、立派に建て、厚く供養くようは致し候へども
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかしそう云う微妙音びみょうおんはアメリカ文明の渡来と共に、永久に穢土えどをあとにしてしまった。今も四人の所化しょけは勿論、近眼鏡きんがんきょうをかけた住職は国定教科書を諳誦あんしょうするように提婆品だいばぼんか何かを読み上げている。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
所化しょけの坊主は寺法によって罰せられたというのは。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
更衣印籠買ひに所化しょけ二人
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)