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かけひき
ふりがな文庫
“
懸引
(
かけひき
)” の例文
と、いつも庄造はさう答へるに
極
(
き
)
まつてゐた。あの女は
兎角
(
とかく
)
懸引
(
かけひき
)
が強くつて、底に底があるのだから、何を云ふやら
眉唾物
(
まゆつばもの
)
である。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
だが、尾張にその
懸引
(
かけひき
)
があれば三河にもまた、
図
(
はか
)
るところがあるのは当然だ。弱小なれば弱小であるほど、毅然たる態度も必要とする。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ナポレオンの様な
此
(
この
)
方面の天才ですら、
夜打朝懸
(
ようちあさがけ
)
、
軍
(
いく
)
さの
懸引
(
かけひき
)
に興味は
有
(
も
)
つてゐたかも知れないが、たゞ戦ひたいから戦つたのだとは受け取れない。
点頭録
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
他の客が奪うようにして買って行く。段々とそうして余分に儲けるなどなかなかその
懸引
(
かけひき
)
があるものだといいます。けれど、こっちはそこまではやれない。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「いえ、もう、
誰方樣
(
どなたさま
)
も
其處
(
そこ
)
がお
懸引
(
かけひき
)
でいらつしやります、へえ。」と
眞面目
(
まじめ
)
で
居
(
ゐ
)
る。
人参
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
不調法ながら拙者は、君命によって一隊の
懸引
(
かけひき
)
を掌る役目を承っている。また、ここにいる木村、野村の両人も、同志の手に余る敵のある時、飛び出して行って加勢仕る役割、謂わば予備員でご座る。
『七面鳥』と『忘れ褌』
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
これが先方の
懸引
(
かけひき
)
であった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
と、いつも庄造はそう答えるに
極
(
き
)
まっていた。あの女は兎角
懸引
(
かけひき
)
が強くって、底に底があるのだから、何を云うやら
眉唾物
(
まゆつばもの
)
である。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
武器のうごきも心のごとく
懸引
(
かけひき
)
がない、大手をひろげた金右衛門の胸元へ、野槍と一緒に真っすぐに突いてかかる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
着衣の件、
喫飯
(
きっぱん
)
の件、談判の件、
懸引
(
かけひき
)
の件、
挨拶
(
あいさつ
)
の件、雑話の件、すべて件と名のつくものは皆口から出る。しまいには件がなければ口から出るものは無いとまで思う。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すでにわれらの計は、遠く大坂につながり、北越とむすび、天下の風雲と、
懸引
(
かけひき
)
の
呼応
(
こおう
)
を持っているものです。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかにも
懸引
(
かけひき
)
のない真情らしく、さうしんみりと訴へられてみると、それには反対が出来なかつた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お延にお延流の
機略
(
きりゃく
)
がある通り、彼には彼相当の
懸引
(
かけひき
)
があるので、都合の悪いところを巧みに省略した、誰の耳にも
真卒
(
しんそつ
)
で合理的な説明がたやすく彼の口からお延の前に描き出された。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この日、彼の胸中は張りつめた強弓のように、そういう感情やら万策の
懸引
(
かけひき
)
に
緊
(
し
)
められていたのである。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかにも
懸引
(
かけひき
)
のない真情らしく、そうしんみりと訴えられてみると、それには反対が出来なかった。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
このワーには
厭味
(
いやみ
)
もなければ思慮もない。理もなければ非もない。
詐
(
いつわ
)
りもなければ
懸引
(
かけひき
)
もない。徹頭徹尾ワーである。結晶した精神が一度に破裂して上下四囲の空気を
震盪
(
しんとう
)
さしてワーと鳴る。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、出兵を
促
(
うなが
)
したが利家は対上杉軍との
懸引
(
かけひき
)
を理由に、それをことわったという説も行われている。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの女は兎角
懸引
(
かけひき
)
が強くつて、底に底があるのだから、何を云ふやら
眉唾物
(
まゆつばもの
)
である。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
相手は
漸
(
ようや
)
く
懸引
(
かけひき
)
をやめた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
好色隠居の
狒々
(
ひひ
)
顔が、
苫
(
とま
)
の間からジロジロとのぞいたり、お角を相手に、お蝶の貞操の代価に露骨な
懸引
(
かけひき
)
をかわしたりしておりましたが、やがて人肉の取引ができると
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信雄は、もう、
懸引
(
かけひき
)
をもってはいられない調子だった。秀吉に催促されて、秀吉の代弁に来たものであることを、泣き言にも取れることばの裏に、いわないでも、自白していた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
中国の戦いに
先駆
(
せんく
)
して、織田勢の至難な先鋒をつとめていたにかかわらず、ひとたび毛利の大軍が、その孤塁をつつむや、信長の令は、前後の
懸引
(
かけひき
)
と利害の大小をにらみあわせて
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妙なはずみで、お綱の体を渡すか渡さぬかの、
懸引
(
かけひき
)
くらべになってしまった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軍、外交、経済、あらゆる
懸引
(
かけひき
)
は国々の方針によって、何とも簡単でない。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「前田はなかなか食わせ者ですぞ。あなた様のように
懸引
(
かけひき
)
なしの肚の底まで初めから見せていては、到底、大事は
遂
(
と
)
げ難いばかりです。ここはもすこし、抜け目を見せる必要がありましょう」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なにしろ、お米にとっては、苦手であり、
手強
(
てごわ
)
い
懸引
(
かけひき
)
相手である。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところが、いつもながら、例の
懸引
(
かけひき
)
知らずな若殿
気質
(
かたぎ
)
。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
懸
常用漢字
中学
部首:⼼
20画
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
“懸”で始まる語句
懸
懸念
懸想
懸隔
懸崖
懸合
懸命
懸物
懸声
懸値