懷劍くわいけん)” の例文
新字:懐剣
からして工面くめんのいゝ長唄ながうたねえさんが、煙管きせる懷劍くわいけんかまへて、かみいれおびからくと、十圓紙幣じふゑんしへい折疊をりたゝんではひつてる……えらい。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をつとかたきおぼえたかといひさま彼の懷劍くわいけん胴腹どうばら突込つきこみしかばへい四郎はアツトこゑたて仰向のつけたふれ七てんたうなすゆゑ隣の座敷ざしきは源八歌浦うたうらなれば此聲このこゑおどろ馳來はせきたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「錢形の兄哥が言ふ通り、俺だつて親殺しを有難がつてるわけではないが、壽齋老人の胸に、あの娘の懷劍くわいけんが突つ立つてゐるんだから、文句はあるめえ」
記し終りてかたふうじ枕元なる行燈あんどうの臺に乘置のせおきやゝしばし又もなんだに暮たりしが斯ては果じ我ながら未練みれんの泪と氣を取直とりなほし袖もてぬぐひ立上り母の紀念かたみ懷劍くわいけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
覺悟かくごの身仕舞見事に、兩の膝を扱帶しごきで結んで、片手に數珠ずじゆを掛けたまゝ、母の形見といふ懷劍くわいけんで、玉のやうな白い喉笛を掻き切らうとして居るではありませんか。
左手ゆんでにて押へ附れば庄兵衞はいきつまりてくるしさに何をするぞといはせもせず右手に懷劍くわいけんぬくもなくつか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)