“感冒(かぜ)” の例文
さて小三郎の許(もと)から絶えて音信(おとずれ)の無いわけで、小三郎は不図した感冒(かぜ)が原因(もと)で寐つくと逆上をいたし、眼病になり、だん/″\嵩じて
「なあに、心配して来てくれてるんだが、ただの感冒(かぜ)だ。熱が少し。九度五分ばかりあるきりで、それも、すぐにさがる筈だ。」
椎の木 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
で、先づ先輩からといふので、その蓄音機をかけると、尾崎氏の吹込演説は感冒(かぜ)を引いたやうな掠(かす)めた声で喇叭(ラツパ)から流れて出る。
「なあに感冒(かぜ)だ。ヘブリンの一服も飲めば癒(なお)るで。」叔父はそう言いながら、繁三を相手に酒を飲んで芝居の話などしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
青い枳殻(からたち)の小枝などまた折りくべて、長い感冒(かぜ)であつたと私が云へば、私もどうやら感冒気(かざけ)でと、妻もわびしい。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
次郎さんは到る処で可愛がられた。学課の出来も好かった。両三日前の大雪に、次郎さんは外套(がいとう)もなく濡(ぬ)れて牛乳を配達したので、感冒(かぜ)から肺炎(はいえん)となったのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
谷中の家では、節子の母親が流行の感冒(かぜ)に罹(かか)ったのが因(もと)で、それきりどっと床に就(つ)いていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
はあ、そんな事を言いますが、しかし浪のは全く感冒(かぜ)から引き起こしたンですからね。なあに、母(おっか)さん用心次第です、伝染の、遺伝のいうですが、実際そういうほどでもないですよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
△煙草は感冒(かぜ)の影響にて、にわかにその量を減じ、あらば吸ひ、なくば吸はぬといふやうになりたり。長くこの方法が惰性となればよけれどいかにや。明日はまた利根河畔の人となるべし。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
もっともちょっとひく感冒(かぜ)と、眩暈(めまい)は持病で、都合に因れば仮託(かこつけ)でね——以前、私の朋達(ともだち)が一人、これは馴染(なじみ)が有って、別なある待合へ行った頃——ちょいちょい誘われて出掛けた時分には
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ポンと卓子(テーブル)の縁(ふち)を敲(たた)く、トタンに、何とも名状し難い、狸の難産の樣な、水道の栓から草鞋でも飛び出しさうな、——も少し適切に云ふと、隣家の豚が夏の眞中に感冒(かぜ)をひいた樣な奇響——敢て
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「だめだよ。そんななりで、君、感冒(かぜ)をひくぢやないか」
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
中川「今申上げた通りに飼えば滅多(めった)にというより殆(ほとん)ど病気になる事はありません。鶏(にわとり)の病気は多く飼う人の不行届(ふゆきとどき)と横着(おうちゃく)から起ります」老紳士「私の友人が以前飼った時分はよくノドケとハナゲという病気になったそうです」中川「あれは鶏(とり)の感冒(かぜ)です。 ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「どうもそのお、この感冒(かぜ)じゃ冒険はむつかしそうでね。明日は半日休養しようと思っている。やはりみんなと一緒に大泊(おおどまり)へ直航することにしようよ。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
感冒(かぜ)をひいたかも知れない、しまったな……という気持でむっくり起き上ってみると、驚いたことには、灯明をあかあかとともした神棚の前で、お久がくぐまり込んで
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ふとした感冒(かぜ)から、かなり手重い肺炎を惹き起した静子が、同じ区内のある小児科の病院へ入れられてから、お増はほとんど毎日そこに詰めきっていなければならなかった。
爛 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もしか同じ問が紐育(ニユーヨーク)の新聞記者からでも訊かれたのだつたら、ロツクフエラアは急に感冒(かぜ)をひいたやうな顔をして、大きな嚏(くさめ)でもしたのだらうが、相手が可愛(かあい)らしい子供だけに、にこ/\して
「だッて、このごろの感冒(かぜ)は本当に用心しないといけないわ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「少し頭痛がするだけだよ。感冒(かぜ)をひいたのかも知れない。……強い酒を飲ましてくれないか、いろんなのを三四杯。ごっちゃにやるんだ。感冒の神を追っ払うんだから。」
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
感冒(かぜ)なひきそよ朝は冷(つめ)たき鼻の尖(さき)ひとり凍(こゞ)えて春を待つ間に
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「佐伯さん、お感冒(かぜ)ですって?」
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
感冒(かぜ)のここちにほの青し
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
感冒(かぜ)のここちにほの青し
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
感冒(かぜ)のここちに身も熱(ほて)る。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)