性癖せいへき)” の例文
そのうへ個人こじんには特殊とくしゆ性癖せいへきがあつて、所謂いはゆるきらひがあり、かふこのところおつきらところであり、所謂いはゆるたでむしきである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
かれの幼時からの性癖せいへきである激情げきじょうをおさえ、向こう見ずの行動に出る危険をまぬがれることができたし、また、かれが日常の瑣事さじに注意を払い
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
このいとうべき性癖せいへきがあるドノバンに、なにからなにまで敬服しているのは、そのいとこのグロースであった。グロースはなんでも他人に感服するくせがある。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
曳くばかりが受け持ちではない飲食起臥きが入浴上厠じょうし等日常生活の些事さじわたって面倒を見なければならぬしこうして佐助は春琴の幼時よりこれらの任務を担当し性癖せいへき
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いや、性癖せいへきと主義とは、何等かの手段によつて調和させられなくてはならないのです。
ともすると自然の懐ろは偉大だとか、自然が美しいとかいって、それが自分とどうしたとかいうでもない、らちもない感想に耽りたがる自分の性癖せいへきが、今さらに厭わしいものにも思われだした。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
其の国の気風性癖せいへきも見えて面白かりき。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
れが實際問題じつさいもんだいになると、土地とち状態じやうたい風土ふうど關係くわんけい住者ぢうしや身分みぶん境遇きやうぐう趣味しゆみ性癖せいへき資産しさん家族かぞく職業しよくげふその種々雜多しゆ/″\ざつた素因そいん混亂こんらんしてたがひあい交渉かうせうするので
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
みにくい現実よりも美しい幻影の方へ、たましいが、生真面目きまじめな「冷静」よりも歓喜に充ちた「昂奮」の方へ、常に引き寄せられると云う、己の性癖せいへきは、いくらめようとしても矯め切れない
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私は生來しやうらい性癖せいへきといふよりは寧ろ環境の爲めに、金持ちやくだらない奴等が、生活を刺㦸する爲めにやるつまらない道樂だうらくに馴れつこになつて、飽き/\してゐる至つて平凡な道樂者だうらくものなんです。