従姉妹いとこ)” の例文
旧字:從姉妹
可懐なつかしい、恋しい、いとおしい、嬉しい情を支配された、従姉妹いとこや姉に対するすべてのおもいを、境遇のひとしい一個蝶吉の上に綜合して
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お俊は最早もう気が気でなかった。母は、と見ると、障子のところに身を寄せて、聞耳を立てている。従姉妹いとこ長火鉢ながひばちの側に俯向うつむいている。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「御主人は、とても優しい人だし、おかみさんは私の従姉妹いとこにあたる人だから、ちっとも、つらい事なんかありやしないからね」
鼈四郎は伯母の末の娘で檜垣の主人の従姉妹いとこに当るこの逸子という女の、その意味での非凡さにもやがてからめ捕られてしまった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ところが土木技師だというその黒瀬にも、クニ子という従姉妹いとこがいるんだそうだ。ぼくが二郎で彼が次郎。やはり妻と二人きりで暮している。
お守り (新字新仮名) / 山川方夫(著)
酒間の斡旋あっせんは鶴子以下の姉妹が当る筈であったが、従姉妹いとこたちやお春や庄吉の妻などが働いてくれたので、姉妹たちはほとんど動かないで済んだ。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
剛子がキャラコの下着シュミーズをきているのを従姉妹いとこたちに発見され、それ以来、剛子はキャラ子さんと呼ばれるようになった。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
クリストフはそれに驚かされた。彼はマンハイム家で、ユーディットの伯母おばたちや従姉妹いとこたちや友だちらに出会った。
この悪戯いたずら学生は、叱られぬのをよいことにして、ちょっとしたわるさをさんざんやった。彼は悪戯気たっぷりで、叔母や従姉妹いとこたちをいじめては喜んでいた。
今一人の妹とか、幾人かのめひをひ、又従姉妹いとこたち——その他の人達とも話をまじへたりして、各人のその後の運命や生活内容にも、久しぶりで触れることができた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
浪子が伯母加藤子爵夫人の長女、千鶴子というはこのなり。浪子と千鶴子は一歳ひとつ違いの従姉妹いとこ同士。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ヘス、シャーラー、コーエンの三人は従姉妹いとこ同士だということである。この中ではヘスが一番すぐれている。バッハの『カンタータ』を弾いたのなどは良かったが、日本にはない。
(それは、その子供の姉たち、妹たち、それから、従姉妹いとこたちかと想像される)庭園の池のほとりに、荒い縞のはかまをはいて立ち、首を三十度ほど左に傾け、醜く笑っている写真である。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
岸本は愛子の口から——節子から言えば年長としうえ従姉妹いとこにあたる「根岸の姉さん」の口から、こうした噂を聞くように成ったことを楽しく考えた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
従姉妹いとこが離散して、学資が途切れたので、休学して、しばらく寄宿舎を退しりぞいた間、夫婦で長屋を借りて世帯を持っていたいささかの知己しるべの処に世話になったが
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道太の姉や従姉妹いとこめいや、そんな人たちが、次ぎ次ぎににK市から来て、山へ登ってきていたが、部屋が暑苦しいのと、事務所の人たちに迷惑をかけるのを恐れて
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
イヴォンヌさんにしろ、従姉妹いとこ槇子まきこ麻耶子まやこにしろ、日本女学園のやんちゃな五人組。……また、叔父の秋作や立上たてがみ氏。いま、ちょっとした過失の贖罪しょくざいをしているあの気の弱い佐伯氏。
お鶴は編み下げた髪のリボンを直して、短い着物のしわを延しながら起立たちあがった。姉や従姉妹いとこが歌う種々な唱歌につれて、この娘は部屋の内を踊って遊んだ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その人柄、風采とりなり、姉妹ともつかず、主従でもなし、親しい中の友達とも見えず、従姉妹いとこでもないらしい。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女の親や姉や従姉妹いとこに対する強い反抗心も。長い艱苦かんくの続いた三年の間の回想はこうして旅から叔父を迎えたことを夢のように思わせるという風であった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こう言えば水臭いと、きっと私をうらむだろうが、いつも言う通り、お前のような稼業をしている者とは、兄弟であったり従姉妹いとこであったりした上に、みんなにたんと世話にもなった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
菅の伯母さんとか従姉妹いとことかいうような人達が、かわるがわる茶の間を出たり入ったりしている。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
従姉妹いとこになってなかよくしましょう。許嫁いいなずけでも、夫婦でも、情婦いろでも、私、まけるわ、サの字だから。鬼にでも、魔にでも、蛇体にでも、何にでもなって見せてよ、芸人ですもの。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近所の女だの、年上の従姉妹いとこだのに、母が絵解をするのを何時いつか聞きかじつて、草双紙の中にある人物の来歴が分つたものだから、鳥山秋作照忠、大伴おほともの若菜姫なんといふのが殊の外贔屓ひいきなんです。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こうお俊が従姉妹いとこに言った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)