引剥ひきは)” の例文
一枚ぐらいはドコかにってありそうなもんだと、お堂の壁張かべばりを残るくまなく引剥ひきはがして見たが、とうとう一枚も発見されなかったそうだ。
みやこの女はまだ市女笠いちめがさかぶ壺装束つぼしょうぞくのままだったが、突然、貝ノ馬介がそばに寄るとそのうすものを、さすがに手荒いふうではなく物穏かに引剥ひきはいだ。
コロボックンクルの小さい可愛らしい手をぐっと捉まえまして、無理耶理むりやりに隠れ蓑を引剥ひきはいでしまいました。
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
お里の部屋に飛び込んで、小机を踏臺に欄間を引剥ひきはがし其處から飛び込んだ八五郎、久六とどんな激しい爭ひを續けたか、それは想像に任せる外はありません。
彼女かのぢよいままでのくゐは、ともすればわけたてかくれて、正面まとも非難ひなんふせいでゐたのをつた。彼女かのぢよいま自分じぶん假面かめん引剥ひきはぎ、そのみにくさにおどろかなければならなかつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それはあらゆる虚偽と停滞とに向かって飛びかかり、あらゆる仮面を引剥ひきはがずんばやまない。そこにはただ一筋の道あるのみである。真実を求めて赤裸の魂が突進する戦いの道である。
……洋服屋の宰取さいとりの、あのセルの前掛まえかけで、頭の禿げたのが、ぬかろうものか、春暖相催し申候や否や、結構なお外套、ほこり落しは今のうち、と引剥ひきはいで持ってくと、今度は蝉の方で
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勤務つとめの時間が近づいたと聞いて、彼は蒲団ふとん引剥ひきはがすように妻に言付けた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
神職 じたばたするなりゃ、手取てどり足取り……村のしゅにも手伝てつだわせて、そのおんな上衣うわぎ引剥ひきはげ。髪をさばかせ、鉄輪かなわを頭に、九つか、七つか、蝋燭をともして、めらめらと、蛇の舌の如く頂かせろ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神職 構わず引剥ひきはげ。裸体はだかのおかめだ。あか二布ふたの……湯具ゆぐは許せよ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云うより早く、ぴりぴりと比羅紙を引剥ひきはがす……
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)