幾代いくだい)” の例文
古池に飛び込むかはづは昔のまゝの蛙であらう。中に玉章たまづさ忍ばせたはぎ桔梗ききやう幾代いくだいたつても同じ形同じ色の萩桔梗であらう。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
うで幾代いくだいものうらみを背負せおうわたしなればだけことはしなければんでもなれぬのであらう、なさけないとてもれもあはれとおもふてくれるひとはあるまじく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やまや、かわや、野原のはらには、かくべつのかわりもなかったけれど、まちむらは、その時代じだいによって、ようすがちがい、ひとうまうしも、また幾代いくだいかのあいだに、たびたびにしました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今取り出して来たという風に、出来合できあい以上のうまさがあるので、紋切形もんきりがたとは無論思わないけれども、幾代いくだいもかかって辞令の練習を積んだ巧みが、その底にひそんでいるとしか受取れなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくこの両方ふたかた竜宮界りゅうぐうかいっての花形はながたであらせられ、おかおもお気性きしょうも、何所どこやら共通きょうつうところがあるのでございますが、しかしきつづいて、幾代いくだいかにわたりて御分霊ごぶんれいしてられるうちには
川上の方から瀬をなしてながれて来る水が一たび岩石と粘土からなる地層につき当つてそこに一つのふちをなしてゐたのを『葦谷地よしやぢ』と村人がとなへて、それは幾代いくだいも幾代も前からの呼名になつてゐた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)