きぬ)” の例文
タルターロびとまたはトルコ人の作れるきぬ浮織うきおり裏文表文うらあやおてあやにだにかく多くの色あるはなく、アラーニエのはたにだに 一六—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
聞いてくれ、聞いてくれ、静かに聞け! 俺は土屋庄三郎だ! 去年の春だ、桜の夜だ、甲府の神社やしろ参詣おまいりに行った。その時年寄りのきぬ売りがいた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
煉瓦作れんがづくりで窓が高いのと、模様のある玉子色のきぬさえぎられて、間接にの中へ光線が放射されるので、とおぎわに見上げた津田の頭に描き出されたのは
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
努々ゆめ/\御座なく候と巨細ことこまやかに申立けるにぞ大岡殿なる程きぬせぬ明白なるこたへなりコリヤ藤八節を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
殊に剃刀かみそりは稀代の名人、撫でるようにそっと当ってしかもきぬを裂くような刃鳴はなりがする、とえたえて、いずれも紋床々々と我儘わがままを承知で贔屓ひいきにする親方、渾名あだな稲荷いなりというが
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へやの両側は四扇しまいびらき隔子とびらになって、一方の狭い入口には青いきぬとばりがさがっていた。小婢は白娘子に知らすためであろう、その簾を片手で掲げて次の室へ往った。許宣はそこに立って室の容子を見た。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
山袴やまばかま穿き、袖無しを着、短い刀を腰に帯び、畳んだ烏帽子えぼしを額に載せ、輝くばかりに美しい深紅のきぬを肩に掛けた、身長せいの高い老人が庄三郎の眼の前に立っている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「とにかく一度でも俺の眼に父上の御名の現れたきぬだ。多少の縁がないとは云えまい」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水色のきぬを腰に纒っているばかりの彼女は、水から上がった人魚のようであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)