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峻嶺
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しゆんれい
暫時くすると
箱根へ
越す
峻嶺から
雨を
吹き
下して
來た、
霧のやうな
雨が
斜に
僕を
掠めて
飛ぶ。
直ぐ
頭の
上の
草山を
灰色の
雲が
切れ/″\になつて
駈る。
買はん
哉、
甘い/\
甘酒の
赤行燈、
辻に
消ゆれば、
誰そ、
青簾に
氣勢あり。
閨の
紅麻艷にして、
繪團扇の
仲立に、
蚊帳を
厭ふ
黒髮と、
峻嶺の
白雪と、
人の
思は
孰ぞや。
飛騨と
信濃の
境を
走る
峻嶺を「
日本アルプス」などと
得意顏に
唱へ、
甚だしきは
木曾川を「
日本ライン」といひ、
更に
甚だしきは、その
或地點を「
日本ローレライ」などといつたものがある。