山彦やまびこ)” の例文
「私が行って人を起こそう。手をたたくと山彦やまびこがしてうるさくてならない。しばらくの間ここへ寄っていてくれ」
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
重々しくひびく山彦やまびこの声。碧海島の山も峰も、また昭和遊撃隊に、わかれをつげているのではないだろうか。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
夕凪ゆうなぎ海面うみづらをわたりてこの声の脈ゆるやかに波紋を描きつつ消えゆくとぞみえし。波紋はなぎさを打てり。山彦やまびこはかすかにこたえせり。翁は久しくこの応えをきかざりき。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あの眞夜半の囁聲や山彦やまびこが前に消えてしまつたと同じに、靜けさと緘默かんもくとの中に消えてしまふもの、單なる聲や幻とより外にはなか/\考へることが出來なかつたことを
少年少女が登場すると、舞台裏でもその唱歌を少し遅らせて、山彦やまびこの心持で歌う。
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
わしたまらず真逆まツさかさまたきなか飛込とびこんで、女瀧めたきしかいたとまでおもつた。がつくと男瀧をたきはうはどう/\と地響ぢひゞきたせて、山彦やまびこんでとゞろいてながれてる、あゝちからもつ何故なぜすくはぬ、まゝよ!
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
首領の声が、広い部屋にとどろきわたって、山彦やまびこのように反響した。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
DE PROFUNDISデ プロフンデス 歌ふ声、山彦やまびことなりて響くかな。
と、手柄てがら名のりにおうずる味方の歓呼かんこ、谷間へ遠く山彦やまびこする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だが、己には腑に落ちねえことが一つある。山彦やまびこがしたな。ところで、影のある幽霊なんてだれも見たことがねえ。とすればだ、幽霊に山彦なんかあってどうするものかね? そいつは変だろ、確かにな?」
山彦やまびこか何んかで、二つに聞くこともあるでせうが——
先生「ははは、それはね山のおばあさんでも神様でもない。山彦やまびこというものじゃ」
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
わしたまらず真逆まっさかさまに滝の中へ飛込んで、女滝をしかと抱いたとまで思った。気がつくと男滝の方はどうどうと地響じひびき打たせて。山彦やまびこを呼んでとどろいて流れている。ああその力をもってなぜ救わぬ、ままよ!
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とき山彦やまびこ口笛くちぶえくかと、ふくろふこゑが、つきそらをホツオーホとはしる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少年「山彦やまびこがまた歌い出したよ」
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)